心臓弁膜症の手術を経験した”こず江”です。心臓の為に運動がいいと聞きました。運動すると筋肉がつきますよね?心臓にも筋肉ってつくんでしょうか?この年になっても効果あるのかしら?
いくつになっても、運動は心臓にいいですよ!運動で心臓に筋肉がつくのか、心臓を鍛えて強くできるのか、解説していきます!
”筋肉がつく”とは?
筋肉というのは、筋繊維と呼ばれる繊維状の細胞が集まったものです。
一般的に、”筋肉がつく”というのは、筋繊維が太くなることを言います。筋肉が太くなると、力が強くなり、持久力が向上します。
負荷をかけて、筋肉を使う事で、筋繊維は太くなっていきます。
運動で心臓に筋肉はつくのか?
運動で心臓に筋肉はつきます!
心臓は筋肉の塊です。全身に血液を送り出すために、収縮・拡張を繰り返しています。負荷をかけて心臓を使う事で、心臓に筋肉をつけることができます。
Schmidらは運動による心臓の変化を、心臓MRIという検査で確認しています。心臓MRIは心臓の形態評価が得意で、病院の中の診療においても、詳細な心臓の評価を行いたいときに用いる検査手法です。
その研究では、84人の被験者を運動をさせる人たちと運動をしない人たちに割り振り、心臓MRIを撮像し、16週間後に再度心臓MRIを撮像されています。
結果は、運動をさせた人たちの方が運動をしない人たちより、心臓の左室(血液を全身に送り出す部屋)・右室(血液を肺に送り出す部屋)どちらでも心筋重量・厚みが増加したというものでした。心臓の筋肉量が多くなった、つまり、心臓に筋肉がついたという事です。
加えて、彼らは、運動をさせた人たちの最大酸素摂取量(体力の指標です)の増加に左室心筋重量が関係している事も示しており、心臓に筋肉がつくことで、体力があがる事が科学的に示されています。(Circulation: Cardiovascular Imaging. 2015;8:e002566)
年をとっても運動で心臓に筋肉はつくのか?
年齢が上がっても、適度な運動によって心臓の筋肉をつける事はできます。
マスターズ選手(平均68±3歳)と座りがちなシニア(平均71±3歳)では、マスターズ選手の左室重量は座りがちなシニアよりも大きいと報告されています。
加えて、1年間のトレーニング後、座りがちなシニアの左室重量はマスターズ選手の左室重量に近づいているので、年齢が上がっても、運動によって心臓の筋肉をつける事はできそうです。(Circulation.2010;122:1797–1805.)
また、慢性心不全を患う方でも運動によって、左室機能が改善する事はよく知られています(JAMA. 2000;283:3095-3101)
ただし、やはり高齢になると筋肉は付きにくくなり、いろいろな研究をまとめたレビューの論文のよると、高齢の方への運動の効果を検証した論文の平均の運動期間は24週間という事ですので十分な効果を得るには時間はかかりそうです(European Journal of Preventive Cardiology, zwad023)
年齢が上がっても、運動の効果はもちろんありますが、少しでも早く運動の習慣を身につける事が重要です。
どうやったら心臓を鍛えることができるのか?
さて、それでは、どうのような運動がよいのでしょうか?
ここでは参考にWHOのガイドラインと心臓リハビリテーションのガイドラインを紹介します。
こちらは全世界の人向けの運動の推奨です。
65歳以上の人は1週間で150-300分の中等度の運動 もしくは 75-150分の強度の運動(もしくはその組み合わせ)が必要であるとされています。
ここでいう中等度とは脈拍が上がり呼吸が早まる運動強度です。
強度とは呼吸がきつくなり早くなる強度です。
うーん、表現が少しわかりにくいですが、運動の強度は脈拍が上がる程度でなければ効果がないようです。会話ができないほど息が上がる強度の運動は、かなり激しい運動と考えていいでしょう。
加えて、中等度以上の筋力トレーニングを週に2回以上取り入れることも推奨されています。
また、機能的な能力を高め、転倒を予防するために、中等度以上の強度の変化に富んだ多成分の身体活動を、週3日以上行うべきであるともされています。
やはり理想的には、いろいろな筋肉を常時使い続ける事と健康な体を手に入れる事ができるのでしょう。
日本循環器学会により2021年に出されたガイドラインです。心血管の病気を患う人用ですが、医学的にどのような運動が心臓にとって適切であるのかという観点で参考になると思います。
運動の強度の決め方はいくつかありますが、簡単な方法として自覚的運動強度を参考にする方法がありますが、適切な運動強度は”ややきつい”~それよりも少し軽いレベルになります。快適に会話しながら行える運動強度という目安も記載されています。
運動の持続時間は最終的には20-60分を目標とされています。
頻度としては、上記のような中強度と低強度の運動を組み合わせるのであれば、
1週間に5回以上を推奨されています。
中強度から高強度の運動を組み合わせる場合は1週間に3~5回です。
いずれのガイドラインでも中強度が一つの目安になっていますが、
2つのガイドラインでの表現を合わせて考えると、
脈が上がるが会話ができるぐらいの息切れでややきついと感じる事が中強度の目安になりそうですね。
運動が心臓にいいことはわかりました。そのためにどれほど運動すべきが勧められている事も知れたのですが、でも、私時間もないし、きつい運動苦手だからできないわ。。
なるほど、そうですよね。それでは以下のような方法をおすすめしますよ。
空いた時間・好きな運動のススメ
運動がいいと分かっていても、なかなかまとまった時間がとれないっという人は多いと思います。
もちろん持久力を付けるためには、ある程度の時間を継続する方がよいと思いますが、
心臓に適切な負荷をかけたり、血管にシェアストレスを加えたりするという事においては、短時間に分割してもある程度の効果が期待できるのではないかと思っています。
実際、心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインにおいては
「30分などのまとまった運動時間を確保できなければ,10分の運動を3回実施するというように,1日の合計として運動時間を確保するよう指導する」
とされています。
どこか出かけた時や、家の中での隙間時間で、少しずつ運動時間を積み重ねるとよいのではないでしょうか。
また、運動の種類については、心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインにおいては
「運動療法は継続が重要であり,患者が快適に長期間継続できるものを選ぶ」
とされていますし、やはりご自身が楽しめる運動を行うのがいいのではないでしょうか。(ただしくれぐれも無理はしないように)
空いた時間に少しずつ運動時間を積み重ねるために、我々はapple watch専用のアプリを開発しています。
トレーニング脈拍を上限と下限を設定して、1日のうちでトレーニング脈拍になった時間が何分であるかをカウントします。
これを使えば、買い物帰りの坂道や階段を上る時間なども、もれなく運動として換算していくことができます。
ご興味がある方はアプリ開発後すぐにお知らせを入れますので、LINEでお友達登録をしていただければと幸いです。
心臓を鍛える運動を少しずつでも積み重ねる自分になれるアプリ
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まとめ
- 運動で筋肉はつきます!それは、たとえ年を重ねていてもです。
- ただし、年齢を重ねると運動の効果が得られるまでに時間がかかるので、少しでも若いうちから運動習慣をつけることも大切です。
- 運動強度の目安としては脈が上がるが会話ができるぐらいの息切れでややきついと感じるレベル(中強度)
- 中強度の運動は65歳以上の人は1週間で150-300分必要。
- まとまった時間が取れない人も、少しずつ好きな運動をする時間を積み重ねていきましょう!