再発予防・健康維持のための生活習慣の知識

癒し画像のススメ。植物や森林の写真を眺めて心臓病を防ぐ!?

健康にはさまざまな要因が関係しています。

心臓病においては生活習慣や運動習慣などが大切なのは、よく知られていますが、自然に触れる事も心臓病を防ぐ事に有効という知見もあります。

今回は、心臓病の方の健康維持のために役立つよう、今までの研究でどんなことが分かっているのかをまとめてみます。

森林浴は心血管疾患の死亡を減少させる

緑地が長生きに繋がるか?と疑問を解決するための研究は、いくつも行われており、その多くで緑地によって心血管疾患の死亡を減少させることが示されています。

いくつもの研究をまとめて解析する、メタ解析という手法がありますが、いろいろな結果がでているが”結局総合するとどうなのか”という事が分かります。

ある程度研究が積み重なれば、メタ解析が可能になるわけですが、緑地と心血管疾患の死亡についても2016年にメタ解析がなされています。(Environ Int. 2016 Jan;86:60-7

結果は、緑地への暴露が高い人たちは、暴露が低い人たちに比較して心血管疾患による死亡率が低かったという結果になっています:Risk Ratio (95%CI)=0.96 (0.94, 0.97)。

その他にも、緑地に行くことで、血圧が下がり、脈拍が安定するという事も知られています。

森林浴で心血管疾患を防ぐメカニズム

緑地の環境に行くと確かに気持ちがよくリラックスでき、健康にもいい気はします。

科学的には、なぜ緑地が健康によいか、心血管疾患を防ぐ効果があるのかという事が示されているのでしょうか?

2016年の総説によれば、今までの研究では以下のようなメカニズムが示されているとまとめられています。

1)自然を単純に見たり観察したりすることで効果を発揮する

2)緑地自身がもつ健康な環境(気温、大気汚染物質・騒音の減少など)

3)身体活動を行う機会が増加する

4)社会的相互作用を高めるため

多くの要素が交わりあっている事で単純には説明することは難しいですが、どれも納得な要素です。

特に、自然を単純に見たり観察したりすることで効果を発揮する事は面白く、緑地を見るだけでも効果があるんです。

例えば、森林を眺めると心拍数が減少しストレス状態が軽減する事がしめされています(Urban For Urvan Gree 21:247-252 2017)。

他にも、植物や森林を眺める事の効果の研究の例として、日本人を対象とした研究が多くあるのでいくつか挙げます。

最初に紹介する研究は、バラによる効果です。(J. Physiol. Anthropol. 2014

この研究では114名の被験者に長さ40cmのピンク色の無臭の30本のバラを40㎝ほど離れたところから4分見てもらっています。

結果、副交感神経活動が上がり、交感神経活性が下がりリラックス状態になった事が示されています。

さらに、観葉植物のリラックス効果も示されています。(Adv. Hortic. Sci. 2014, 28, 111–116

この研究では85名の高校生に3鉢の60㎝程のドラセナを55㎝離れたところから3分見てもらっています。

結果、バラと同様に、副交感神経活動が上がり、交感神経活性が下がりリラックス状態になった事が示されています。

では、造花はどうでしょうか?

本物のパンジーと造花のパンジーの効果を比較する実験が行われました。(Int. J. Environ. Res. Public Health 2015, 12, 2521–2531

この研究では40名の高校生に本物のパンジーと造花のパンジーを3分間みてもらっています。

結果、交感神経活性の低下効果は造花の方が弱かったことが示されています。

写真だけでも効果がある!?

見るだけでも健康効果がある植物や森林ですが、写真で見るだけでも効果がある事をご存じですか?

環境省は花の画像を見ることでストレスホルモン値が21%減少する事を示しています(国立公園の健康効果とは?

この報告の元となった研究を読み深めてみます。( Journal of Environmental Psychology.2020

研究で使用された花の写真は以下の白い菊の画像で、比較的シンプルな写真で、私達でも取れそうなレベルです。

さらに、論文では花の写真がストレス時でも血圧を安定させるという事を示唆する結果も報告されています。

31⼈の健康な被験者に花の写真を見せた場合と空の写真、椅子(人工物)を見せた後に、それぞれストレスを加えて血圧をあげたという研究です。

花の画像を見ていた場合には血圧の上昇が抑えられる傾向があり、負荷後の血圧が低下する際には、花の画像を見ていた場合に最も血圧が安定する(低くなる)という結果でした。

植物や森林の写真の健康効果についてはまだ研究は少ないので、これからも研究がすすめられることを期待します!

まとめ

  • 森林浴によって、心血管疾患の死亡率が下がるという事は、科学的に強い証拠となるメタ解析でも示されています。
  • 森林浴のよい効果には様々な要因があるようですが、自然を単純に見たり観察したりすることで効果を発揮する事もできます。
  • 植物や森林の写真を見るだけでもストレスホルモンの低下など科学的に有効性が示されており、効果がありそうです。
  • この記事を最後まで読んでいただいた貴方はすでにいくつもの植物の写真を見ていますのですでにストレスホルモンは低下して、血圧も安定していることでしょう!

アイキャッチ画像:著作者:Freepik

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