心臓病の方にとっての体重計測の重要性
一般的に体重の定期的な計測は、肥満を防止するために重要です。
食べすぎや運動不足などの生活習慣の乱れによる脂肪の増加が体重増加して現れれますので、体重が増えないような生活習慣は健康維持に大切です。
加えて、心臓病の人にとっては、体重管理は心不全の管理のためも重要です。
この場合は、体内に蓄積した”水分”による急激な体重の増加がないかどうかをチェックしています。
日本循環器学会が発表した「急性・慢性心不全診療ガイドライン」においては不全増悪の症状・徴候を早期に発見するために,毎日の体重は重要であるとされています。(急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版))
それに準じて私も医師として、心臓病の方には毎日体重を測るように勧めてきました。
そして、心臓病の方も体重を測る習慣を身に着けてくれます。
でも、実際にどんな変化があれば注意が必要かなど、体重というデータの解釈についての理解を十分にしていない人が多い気がしましたので、ここにまとめたいと思います。
危険な体重増加
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参照すると、
1週間で2㎏の体重増加は一つの心不全の兆候
とされています。
加えて、
3日以内に2kg以上の体重増加を認める場合には利尿薬の増量が必要と考えられる
とされています。
心不全の水分貯留は急激に進みますので、1日に300gずつ増加して、1週間で300x7=2.1㎏増加するというわけではないと思います。
ある日突然1㎏や2㎏増加するという事が起こり得ると思います。
少なくとも、息切れが強くなったりむくみがあって心不全の兆候がありそうな時は毎日こまめに体重を測る方がいいでしょう。
そこまで急激な増加ではないけど、生活習慣は変わっていないのに、少しずつ体重が増加する場合もあると思います。
体重が増える原因として、肝硬変、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、甲状腺機能低下症、薬剤性(カルシウム拮抗薬、ステロイドなど)もありますので、他の症状も加味しながら、注意が必要です。
危険な体重減少
実際に、体重を定期的に測っているといると、減っていく時もあります。
体重が減っている時は、どれほど減っていると病的なのでしょうか?
一般的に、1年で5%以上の意図しない体重の減少が起こると要注意です。(Med Clin North Am. 2014;98:625-43.)
そのような注意すべき体重減少の発生率は7~13%程度で、特に65歳以上の人たちでは15~20%であると報告されています。(BMJ Best Practice)
原因は非常に幅広いです。
最も一般的な原因は次の通りです。(BMJ. 2011 Mar 29;342:d1732)
- 悪性腫瘍
- 胃腸の状態が悪い
- 精神的な要因
他に考慮すべき原因は以下の通りです。
- 臓器不全に伴う悪液質症候群(例,心不全,慢性閉塞性肺疾患,腎不全)
- 内分泌障害(例,甲状腺機能亢進症,糖尿病,副腎不全)
- 重篤な感染症(結核やHIVなど)
- 薬の副作用
まとめ
体重増加でまず注意すべきは:1週間で+2㎏→心不全かもしれません。
そうでなくても月単位で体重が増加する場合は肝硬変、ネフローゼ症候群、慢性腎不全、甲状腺機能低下症、薬剤性(カルシウム拮抗薬、ステロイドなど)の病気が隠れている事も。
体重減少で注意すべきは:1年でー5%→まずは悪性腫瘍・胃腸の状態・精神的な要因がないか確認する方がいいかもしれません。