運動をすることは健康維持に重要です。
心臓リハビリでは運動の程度は心拍数で処方していて、心拍数が上がれば心臓のトレーニングになるので、心臓病を患う人にはどんな運動でもいいので、好きな運動の習慣をつけてほしいです。
なるほど、心拍数をあげてトレーニングですね。
私は、スポーツを観ることがすきで、この前のWBCなんて、大谷選手が大活躍でとても心拍数が上がりました!
心拍数が上がればいいなら、スポーツ観戦でもいいですか?
スポーツをやる事も楽しいですが、見るだけでも面白いですよね。
でもスポーツ観戦だけでは、やはり健康効果としては不十分だと思います。
逆に、スポーツ観戦は心臓病を起こしてしまうリスクもあるとしている研究もあるんですよ。
今回はスポーツ観戦の心臓への影響と、スポーツをするときの違い、そして、安心してスポーツ観戦をするためのアイディアについてまとめてみます。
本日の内容はこちらのYoutube動画でも解説していますので、ご参照ください。
スポーツ観戦の体への影響
スポーツ観戦が健康に良い影響を与えることがいくつかの研究で示されています。
イギリスでの非営利企業であるBetterの調査では、スポーツファンの2 人に 1 人が、スポーツを見ることで家族や友人との交流が深まると述べています。また、49% はメンタルヘルスに良いと答え、35% はスポーツを見るだけでコミュニティの一員だと感じられると答えました。
株式会社西武ライオンズと早稲田大学は共同で65歳以上の方へのスポーツ観戦の効果について研究しています。
プロ野球を観戦しなかった人たち(対照群)と比較して、プロ野球を観戦した人たち(観戦群)は、2か月間のプロ野球観戦後に認知機能や抑うつ症状が改善することが示されています。
スポーツを観る事によって、スポーツを行う時のような体の反応がでるという事も知られています。
「ミラーニューロン」の事をご存じですか?
他人の行動を見ることで、脳内で自分がその行動をしているかのように反応する「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞群が働いていることがわかっています。ミラーニューロンは、スポーツ観戦などでよく活動するとされ、観戦することで健康にも良い影響を与えることが研究されています。西シドニー大学の研究では、ジョギングの映像を見ただけでも心拍数、血流量、呼吸数が増える事が示されました。
スポーツ観戦の注意すべき体への影響
一方、スポーツ観戦が体に悪い影響を与えるかもしれないという報告もあります。
特に心臓の負担になる可能性については以前から多数報告があります。
例えば、2006年ドイツでのサッカーワールドカップの際に行われた有名な研究があります。ワールドカップ開催中の心臓の病気によって救急搬送された人の数は、なんと、通常時の2.66倍であったという報告です。特に、ワールドカップ期間中では心筋梗塞などの冠動脈の病気の発症者のうち、再発よるものであった割合が47%と通常時の29%よりも高かったことが示されています。
さらに、カナダのモントリオール大学の研究ではスポーツ観戦と心臓への負担について詳しく研究がなされています。
カナダで人気のスポーツであるアイスホッケーの地元チームのファン20人(平均年齢46歳、35%が女性)に、複数の試合をテレビで見てもらい、その間の心拍数や脈動ストレス指数を評価分析したものです。
結果は、年齢や性別に関係なく被験者らは観戦中の心拍数が平常時よりも平均75%増加し、延長中や得点・失点時など大きな変化があったときには110%も増加していました。
これは、強度の高い長距離マラソンなどを行ったときと同等の心拍数の変化とされています。
この結果は、ファンとしての熱心さも関係していなかったとのことで、誰にでも起こりうる変化という事になります。
スポーツを行うことと観戦する事の大きな違い
以上から、スポーツを行わなくても、スポーツを観戦するだけで、心拍数を上昇させ、心臓へ負荷をかける事ができ、ある種心臓のトレーニングにもなる気がしますが、
注意すべき大きな違いは、”全身の筋肉をつかっていないこと”だと考えます。
スポーツ観戦時の心拍数の上昇は興奮してアドレナリンが出ている事による影響だと思います。
アドレナリンにより交感神経の活動が高かぶり、心臓を刺激し、心拍数が上昇するわけです。
交感神経は同時に、筋肉を栄養しているような抹消の血管を引き締めて内臓などの中枢の血管に血流を集める働きをします。
一方、筋肉をつかう場合は、筋肉へ酸素を送る必要があるので、筋肉への血流も確保する必要があります。
そのために、体は交感神経の働きに反抗して筋肉を栄養している血管を拡張させます。
スポーツを観ているときに、スポーツを行った時の同等の心拍数の上昇があった場合は、スポーツを行った場合よりもより、中枢に血液が集まっており、圧が高くなっている可能性があります。
よって、同じ心拍数の上昇に見えても、心臓や冠動脈にとっては負荷が大きいのではないかと推察します。
また、スポーツ観戦だけでは、スポーツをやって得られるような、筋肉の増強や、筋肉からのホルモンの発生、骨の強化と骨からのホルモンの発生などのよい効果が得られないので、健康効果としてはスポーツを行うよりもやはり不十分でしょう。
スポーツ観戦時に過度の心負荷にならないために
以上のことから、特に心筋梗塞などの冠動脈の病気を昔経験したことがある人など心臓病の人は、スポーツ観戦時には注意が必要だと思います。
Apple watchなどのウェアラブルデバイスを身に着けて、脈拍があがりすぎないように注意する事は予防策として有用かもしれません。
もし心拍数があがり過ぎていて、交感神経の興奮を抑えたいときには、大きく息を吸い、ゆっくり息を吐く腹式呼吸を行ったり、水を飲んで食道下部に分布する副交感神経を刺激する事もいいかもしれません。
加えて、交感神経が高ぶってしまうようなものを摂取しない事は重要でしょう。
例えば、お酒やカフェインは交感神経を高ぶらせてしまうので、注意が必要でしょう。
まとめ
- スポーツ観戦は体によい効果があるが、心負荷になるという報告もあるので注意が必要。
- スポーツを行うときとは違い、スポーツ観戦時は筋肉を動かしていないので、心拍数の印象よりも心臓への負荷は大きい可能性がある。また、スポーツ観戦だけでは、スポーツを行った場合と同等の健康効果が得られるとは考えにくい。
- 冠動脈の病気を持っている人などは、スポーツ観戦時に興奮しすぎると再発の危険があるので、心拍数を測るなど予防策を講じておくといいかもしれません。