ずぼら栄養学

筋トレの効果を高める食事について

心臓病の方はウォーキングや自転車漕ぎといった有酸素運動と、筋力トレーニングを行うことが勧められています(心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2021年改訂版)。

筋力は歩く速さや体力にも強く関わってきます。筋力が低下すると、すこし動くだけでも疲れやすくなったり、転倒しやすくなったります。歳をとるだけでも筋力は徐々に低下していくので、できるだけ筋力を維持・改善していく必要があります。

筋トレはある程度の強さで、しっかりと回数をこなし、何より継続して行うことが重要です。屋外のウォーキングであれば景色が変わるので、飽きずに継続できることも多いと思いますが、筋トレは同じ動きの繰り返しになることが多く、すぐに飽きてしまう方も多いと思います(もちろん筋トレが好きな方も多くいらっしゃいます!)。

PTアッキー

せっかくキツイ筋トレを行なったなら、より効果が得られやすい方がいいですよね?

今回は筋トレの効果を少しでも高めるための食事について、注意点も含めてまとめました。

どの栄養素が重要なの?

筋肉は日々壊されたり、新たに作られたり、を繰り返しています。つまり、筋肉を強くしたり、量を増やすためには、壊されるよりも多く作る必要があるのです。

筋肉は主にタンパク質から作られているため、「タンパク質」の摂取が重要になります。タンパク質は筋肉を作るだけでなく、さまざまな細胞の元になっていますし、運動するためのエネルギー源にもなっている大事な栄養素です。

ではタンパク質だけをしっかりと摂取すればいいか、と言われるとそうではありません。先ほど記載したように、タンパク質は運動する時のエネルギー源にもなります。エネルギー源が足りない状態で運動すると、筋肉を壊してでもエネルギーを作ろうとしてしまうのです。

そこで、代わりのエネルギー源として重要な役割を果たすのが、「糖質」です。そして糖質はエネルギー源となるだけでなく、筋肉を作る作用をサポートする役割もあるのです。糖質を摂取すると、膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンは筋肉に糖を取り込む作用があると同時に、筋肉への血流を増やし筋肉の元になるタンパク質をより多く届ける役割があります。

つまり、筋トレの効果を高めるためには、「タンパク質」と「糖質」が必要となります。

どれくらい摂取すればいいの?

タンパク質の摂取量の目安について、多くの研究が実施されています。

高齢者において、筋肉量を維持するには1.0g/kg体重/日(つまり、体重60kgであれば1日60g)以上を摂取することが勧められています(厚生労働省.日本人の食事摂取基準 2020年版)。

これだけの量を取るのが大変、という場合でも最低でも0.4g /kg体重(体重60kgであれば1日24g)以上は摂取してください(Moore.et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015 January;70(1):57–62 doi:10.1093/gerona/glu103)。

ただし、タンパク質を多く摂ったからといって効果が高まるわけではないので、食事全体のバランスを考えて摂取する必要があります。

どのタイミングで摂取すればいいの?

運動を行うと身体の中でのタンパク質の合成が促進されます。

時間の経過とともにタンパク質の合成速度は低下するため、できるだけ運動後早い時間帯でタンパク質を摂取することがおすすめです(Churchward-Venne.T.A.et.al.Nurtr.Metab.9:40.2012)。

また、筋肉を作ったり、壊したりする体の働きは1日を通して行われているので、昼や夜にまとめてタンパク質を多く摂取するよりも、朝・昼・夕と満遍なくタンパク質をとる方が有効と言われています(SM Phillips. Sports Med (2014) 44 (Suppl 1):S71–S77 DOI 10.1007/s40279-014-0152-3)。

おすすめの食べ物は?

タンパク質にもいろいろな種類がありますが、その中でも必須アミノ酸の一つである「ロイシン」を多く含んでいる食品が筋トレの効果を高めるために重要、と言われています(Phillips.Nutrition & Metabolism.2016,13:64 DOI 10.1186/s12986-016-0124-8)。

ロイシンは乳製品や魚介類、卵類、大豆に多く含まれています(文部科学省.日本食品標準成分表2020年版)。もちろん肉類にも多く含まれていますが、脂身の多い肉は脂質も多く含まれているので注意が必要です。

注意点〜腎臓病とタンパク質について〜

心臓病の方の中には、腎臓の機能が低下している方も多くいます。

腎臓の機能が低下している方は、タンパク質を多く摂取すると腎臓の機能が悪化する可能性が懸念されています。

そのため、腎臓の機能に応じたタンパク質摂取量の制限が勧められています(日本腎臓学会.慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014年版)。

ただし、筋肉の量が極端に少ない方などに対してはその制限は少し緩和されます(日本腎臓学会.サルコペニア・フレイルを合併した保存機CKDの食事療法の提言)。

一方で、タンパク質の摂取の摂取量と腎臓の機能が悪化するスピードに差はないため、タンパク質の摂取を制限するべきではない(Sekiguchi,et al. Geriatr Gerontol Int. 2022 Apr;22(4):286-291.doi: 10.1111/ggi.14355. Epub 2022 Feb 10)、という報告もあります。

いずれにおいても、ご自身の腎臓の機能や病状の進行具合によって対応は異なりますので、一度主治医と相談してください。

まとめ

  • 筋トレの効果を高めるためには「タンパク質」と「糖質」の摂取が重要です
  • タンパク質は体重あたり1g以上を目標にしましょう
  • 運動の直後に「タンパク質」と「糖質」を摂取することが望ましいです
  • 朝・昼・夕と3食バランスよくたタンパク質を摂取しましょう
  • 腎臓の機能が低下していると指摘されている場合は、主治医とご相談ください

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