再発予防・健康維持のための生活習慣の知識

熱中症と心臓病の関係

6月に入りだんだんと気温が上がってきましたね。地球温暖化の影響なのか、日本の平均気温も年々上昇し、夏が長くなったと感じる人も多いのではないでしょうか。

PTアッキー

個人的には暑い日々が苦手なので、早く涼しくなってほしいと願っています。

夏になると毎年必ず増えるニュースといえば、熱中症に関するニュースですよね。熱中症は、屋外だけでなく、自宅で過ごしていても発生する可能性があるので注意が必要です。

熱中症はしっかり対策をすることで防ぐことができます。また、熱中症になると心臓病になりやすいという報告もあります。しっかりと対策をして、暑い夏を乗り切りましょう!

熱中症とは

熱中症は、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温かが上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称です。

暑いところにいたり、運動をすると汗をかきますよね。その汗が蒸発する時に熱を奪っていくのですが、体の中の水分や塩分が足りなくなると、汗がかけなくなります。その結果体温がどんどん上昇してしまい、熱中症を発症してしまうのです。

昨年(令和4年5月から9月)は熱中症で71,029人もの方が救急搬送されています(総務省消防庁発表データ)。そのうち、高齢者は全体の54.4%(38,725人)を占めています。

熱中症は屋外で発症するもの、と考えられている方も多いと思います。しかし、実は屋内や自宅での発生割合も非常に高いのです。

住居仕事場①仕事場②教育機関公衆(屋内)公衆(屋外道路その他
39.5%11.4%2.4%5.6%7.4%11.8%16.6%5.3%
住居:敷地内すべての場所を含む
仕事場①:道路工事現場、工場、作業所など
仕事場②:田畑、森林、海、川など(畜・農・水産作業を行っている場合のみ)
教育機関:幼稚園、保育園、小学校、中学校、高等学校、専門学校、大学など
公衆(屋内):不特定多数が出入りする場所の屋内部分(劇場、飲食店、百貨店、駅など)
公衆(屋外):不特定多数が出入りする場所の屋外部分(競技場、野外コンサート会場など)
道路:一般道路、歩道、有料道路、高速道路など

熱中症の危険信号

熱中症は高齢者や普段から運動をしていない人、暑さに慣れていない人がなりやすいとされています。また、体調がすぐれない時にも熱中症になりやすいです。体調を整えるためには睡眠をしっかり取ることも重要です。睡眠についてはこちらのコラム(睡眠不足の心臓病への影響について不眠の治し方)も参考にしてみてください。

心臓病で利尿剤を飲んでいる方や、主治医から水を飲む量を制限されている方も多くいると思います。利尿剤や水分制限の影響で、夏場は普段よりも脱水になる可能性が高まります。また、心臓は戻ってくる血液が減ると、心拍数を上げることで全身に血液を送ろうとします。心拍数が上がると心臓への負担も増えてしまう可能性があります。そのため、心臓病の方は、これからの時期、熱中症により注意を払う必要があります。

熱中症が起きやすい環境は、

  • 気温、湿度が高い
  • 風が弱く、日差しが強い
  • 照り返しが強い、アスファルトが熱くなっている
  • 急に気温が上がった

となっています。熱中症の発生時期も梅雨の合間や梅雨明けの気温が上昇している時期に集中しているので、これからの時期は要注意ですね。

軽度の熱中症の症状としては、以下のような症状があります。

  • 立ちくらみ:体温を下げるために血液が皮膚の表面に移動します。血液も重さがあるため、足の方に血液が溜まり、その結果脳への血液が減り、立ちくらみ生じるとされています。
  • 筋肉の痙攣、こむら返り:汗の中にはナトリウムなどの塩分も含まれています。血液の中のナトリウムなどが減少すると、筋肉はこむら返りを起こしてしまいます。
  • 喉の渇き:体の中の水分が2%減少すると、喉の渇きを感じます。
  • めまい、頭痛、吐き気:脱水が進むと、心臓に戻ってくる血液の量も減ってしまいます。そのため、全身の様々のところに十分な血液が送られなくなり、めまいや頭痛、吐き気が生じます。

頭痛や吐き気が生じた場合は、熱中症の症状が進行している状態ですので、すぐに医療機関を受診してください。

高齢者に多い理由

昨年の熱中症による救急搬送件数の半分以上は高齢者が占めています。これは高齢者の身体的な特徴が関わっています。

まず、「暑い」と感じにくくなっていることが一つの要因となっています。これは、皮膚にある温度センサーの働きが低下してしまうためです。このセンサーの働きが低下すると、汗をかきにくくなり、体温が高くなってしまいます。Coullらは、温度32度、湿度50%の環境下で、じっとしている時と運動した時の汗をかいた量を測定する実験を行っています。その結果、高齢者は若い人と比べ、全身の発汗量が減少し、皮膚の温度が高くなった、と報告しています。つまり、汗をかいて体温を下げる機能が低下している、ということになります。また、同じ研究で暑さを不快に感じるかどうか、も確認されているのですが、高齢者の方が不快感は少ない、という結果も出ています。つまり、高齢者は暑さを感じにくいため、冷房の使用時間が短くなったり、設定温度を高く設定してしまう可能性が考えられます。

次に、高齢者の方が体の中の水分が少ないことも要因に挙げられます。体の中の水分は体温調節の役割も果たしているのですが、水分量は年齢とともに減少すると言われています。そのため、熱中症では容易に脱水の状態になりやすいのです。なので、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給をすることが重要です。

熱中症と心臓病の関係

熱中症は心臓へも重大な影響を及ぼします。まず、気温と心臓病の関係について、Liuらは気温が1度上昇すると心臓病で亡くなる可能性が2.1%高くなり、不整脈を発症したりや心臓が停止してしまう可能性は1.6%高くなる、と報告しています。

また、Wangらは20歳以上の台湾人のデータを200年から2013年にわたって解析し、熱中症と心臓病の発症率についてまとめています。その結果、熱中症になったことがある人は、熱中症になったことがない人と比べ、3.9倍心臓病になる可能性が高くなる、と報告しています。

つまり熱中症は発症直後はもちろん、長い目で見ても様々な病気の原因となってしまうため、熱中症にならないように予防することが非常に大事です。

熱中症になった場合の対応

熱中症になってしまったかも、と感じたらとにかく体を冷やし始めることが重要です。

  • まずは風通しのいい日陰や、クーラーが効いている涼しい室内に移動しましょう。
  • そして衣服を緩め、水分と塩分の補給をしてください。
  • 次に冷たい水や氷で体を冷やします。首の付け根や脇の下、足の付け根は皮膚のすぐ下に血管があるため、全身を効率よく冷やすことができます。

これらの対応を行なっても症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。

熱中症に関するアラート

熱中症の危険性が高い時には天気予報で以下の指標が発表されています。

★暑さ指数(WBGT : Wet bulb Globe Tenperature)

これは、気温・湿度・日射・風の要素から計算される指標で、労働や運動時の熱中症予防に用いられています。

暑さ指数の日常生活に関する指針は以下のようになっています。

暑さ指数(WBGT)注意すべき生活活動の目安注意事項
危険(31以上)全ての生活活動で起こる危険性高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する
厳重警戒(28−31)外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する
警戒(25−28)中等度以上の生活活動で起こる危険性運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる
注意(25未満)強い生活活動で起こる危険性一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある

この暑さ指数が33以上と予測されると、『熱中症警戒アラート』が発表されます。熱中症警戒アラートは前日の17時ごろ、もしくは当日の5時頃に発表されるので、外出を予定している時には注意してください。

熱中症警戒アラートが発表されたら、以下の点に注意してください。

①熱中症のリスクが高い方に声をかけましょう

②外出はできるだけ控え、暑さを避けましょう

③普段以上に熱中症予防行動を実践しましょう

④暑さ指数(WBGT)を確認しましょう

⑤外出の運動は原則、中止/延期をしましょう

まとめ

  • ・熱中症は自宅の中にいても発症する危険性があります。
  • ・熱中症にならないために、こまめな水分補給、暑い時間帯は外出を避ける、冷房を使用するなどの対策をとりましょう。
  • ・熱中症になると、心臓病になる可能性が高まります。

もし医師から水分制限を言われている場合でも、適切な水分補給は非常に重要です。主治医とも相談し、熱中症にならないよう注意しましょう。

参照:環境省 熱中症予防情報サイト

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