人間、年齢を重ねるといろいろな病気を発症するものです。
特に、脳梗塞や心臓病は突然発症し命を奪う事もあります。
貴方のお知り合いで、脳梗塞や心臓病を発症した方はいますか?
もしかすると、アップルウォッチを有効に活用していれば、病気が突然発症する前に兆候を事前に検知する事ができたかもしれません。
もしくは、貴方自身が病気の経験者でしょうか?
そうであれば、アップルウォッチを有効に活用する事で、病気の再発を防ぐことができるかもしれません。
本日は、アップルウォッチの愛用者・循環器専門医・運動生理学の研究者である私の視点で、健康増進のためにアップルウォッチでできるすごい事3選を紹介します!
最後に注意点も述べたいと思います。
アップルウォッチでできるすごい事①:心拍数計測
なんといっても、循環器専門医として心拍数が計測できることは非常に魅力的です。
心拍数は心臓の働きを見るには非常に基本的な情報です。
アップルウォッチでは、寝ている間の脈拍、安静時の脈拍、最低・最高脈拍など詳細なデータがみられるのはありがたいです。
心不全の人は、心臓の働きが悪くなってくると一回の心拍出量が減り、心拍数が増える事があります。
寝ている時や安静時の脈拍が上がってきていたら、ちょっと心臓わるくなってないかな~って不安になりますね。
適切な強度の運動を行う事で、心臓病の再発を防ぐことができますが、強度は心拍数で設定します。
これは、心臓病の方に限ったことではありません。
WHOの勧告によれば、病気を持っていない人であっても中等度のある程度疲れる運動が必要であり、脈拍を測って運動強度を調整する事は、万人にとって健康増進に重要です。(WHOガイドライン)
こちらの記事も参考にして下さい↓↓
今まで、運動する時には患者さん自身の指で脈を計測して下さいと、(ちゃんとやれる人がいるのか疑問に思いながら・・)言ってきました。
これからは、時計が心拍数を計測してくれる時代です。
と、健康管理に大変重要な心拍数ですが、重要だからこそ、精度は高くないといけません。
そうでないと、間違った判断に繋がります。
その点、アップルウォッチの心拍数のデータは精度が高いです!
”精度の高い心拍数”これが、アップルウォッチのいいなと思う最大の機能です。
他のスマートウォッチとアップルウォッチとの心拍数の精度の比較についてはこちらも参考にして下さい↓↓
アップルウォッチでできるすごい事②:心電図を記録
Apple Watch Series 4以降で心電図の記録が可能になりました。(SEは不可)
2021年1月から、米国などから2年以上遅れる形で、日本でも心電図アプリが利用可能となっています。
心電図アプリは不整脈の一種である心房細動が起きていないかどうかを調べることができます。
心房細動の検出力についてはApple Heart Studyという有名な研究があり、お墨付きです。
心房細動は発症している事を自覚できていない人が多いです。
怖い事に、知らないうちに心臓の中に血栓ができて、それが脳の血管に飛んで脳梗塞になってしまうんです。
そうなる前に、心房細動を見つけて、薬で治療を開始すれば、脳梗塞を防げる可能性があります!
注意点としては、アップルウォッチの心電図は病院でとるような心電図と比べて、情報がとても少ないという事です。
アップルのホームページに例示されている画面は以下です。
波形は1つだけで、いわゆる、単誘導心電図です。
その時点でで、循環器内科医の私からすると情報は少ないです。
病院の中でとる心電図は12誘導であり、心臓を12方向から観察しているようなものです。
1方向から観察だけでは、きちんとした評価はできません。
加えて、波形の質も十分ではないですね。心電図はP波、QRS波、T波などパーツを分けて読影しますが、この例を見てもP波がどこか判定できませんし、QRS波にノイズが多く正確な判断は困難です。
私が初めてアップルウォッチでとった心電図波形を見たのは2021年に運動生理学の教室に留学していた時です。
教授が自分のアップルウォッチで自分の心電図をとって送ってきたんです。
この心電図を見るなり、QRS波形の中に異常な波形が混じっているのが気になりました。
このような異常な波形は心室での伝導障害を示している場合があり、中には突然死を行うような不整脈が起きやすいというサインである事があります。
心配になり、念のため翌日教授に話して、12誘導心電図を取らせてもらう事にしました。
結果は、問題なし。
ちゃんとした機械でとると、きれいな心電図で特にQRS波の中の小さな波はありませんでした。
アップルウォッチの心電図で見えた波はノイズだったのでしょう。
このように、心房細動のような比較的簡単なものは判定可能ですが、細かい判定まではアップルウォッチの心電図では限界があります。
アップルウォッチの波形を闇雲に信じず、正確な判断をするときには12誘導心電図が必要でしょう
アップルウォッチでできるすごい事③:最大酸素摂取量の推定
最大酸素摂取量は循環器専門医として魅力的な指標です。
最大酸素摂取量は体力の指標で、心肺機能はもちろん、抹消の筋肉の酸素消費の効率も関わってきますし、全身のトータルの生命力を示すような指標です。
最大の予後規定因子といっても過言ではありません。
ですが、最大酸素摂取量を測るには、非常に大変な検査を行う必要があります。
CPXといって、口と鼻を密閉できるマスクを装着して、被験者に最大で運動できるところまで、必死に運動をしてもらう必要があります。
特殊な検査になるので人でも必要です。
あまりに負荷をかけるので、被験者に不整脈が起きたり、運動後に迷走神経反射で失神してって倒れてしまう事もあるので、危険も伴うんです。
正直、やりたくない検査です。。
その大変な検査をせずとも最大酸素摂取量が計測できることは、大きな目標の一つで運動生理学でいろいろな研究が進められているんです。
私も、そのトピックについて現在も研究中です。
そんな中、アップルウォッチで最大酸素摂取量が推測できるのであれば非常に素晴らしいことです。
ただし、注意点として、正直現時点では精度には不安があります。
私は生理学の研究をしていた時に被験者としてCPXを受けた事があります。
2021年1月22日にCPXで測定した実際の最大酸素摂取量は46.3ml/kg/分です。
一方私のアップルウォッチのデータからの予測値は2021年3月4日時点で38.2ml/kg/分と解離があります。
今後改善に期待したいですね。
個人の値の変化を観察して、下がったか上がったかを判断するという事には現段階でも利用できるかもしれません。
心拍数計測を利用したアプリ
循環器内科医の視点で、患者さんの助けになってくれそうだと期待している機能を3つ紹介しました。
なんといっても、正確な脈拍測定は魅力的です。
アップルのヘルスケアアプリでは、不規則な心拍を検知して通知を行ってくれたり、非活動時に心拍数が一定以上高くなった時に通知を入れてくれる機能があります。
現在、循環器専門医がApple watch専用の運動支援アプリを開発中です。
循環器専門医の脈拍に基づいた運動強度の設定のノウハウと、Apple watchの精度の高い脈拍計測を掛け合わせた世界で初めてのアプリです。
「せっかく運動するなら、無駄にならないいい運動にしたい」「そろそろ真面目に運動しないと」と思っている方にお勧めです。
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