循環器専門医でApple Watchユーザーのマルです。
本日は私も患者さんからよく質問を受けるApple Watchの「高心拍数の通知」について解説をします。
はじめに:Apple Watchの心拍数通知機能
Apple Watchは、心拍数を計測するセンサーを備えており、バックグラウンドでも5分程度の間隔で記録しています。(ワークアウトアプリなどのアプリを起動すると心拍数をリアルタイムで計測し始めます)
得られた心拍数データを基に高心拍数の設定よりも心拍数が高いと時に通知を送る機能を備えています。
高心拍数の設定はiPhone内の「Watchのアプリ」を起動→「通知」→「心臓」 で変更が可能です。
高心拍数の他に低心拍数を設定する事もできます。
1つ間まぎらわしい点は、この通知は安静時のみに出現する事です。
つまり、運動して脈拍が上がっている時には通知はでないようになっています。運動して脈拍が上がるのは当たり前ですから、毎回ぶるぶる震えられるよりもいいですね。
この通知は必ずしも深刻な健康問題を意味するわけではありません。一時的な要因や日常の活動によっても心拍数は変動するため、通知を受けた際には冷静に対処することが重要です。
通知の信頼度は?
通知が出てまずは、本当にあっているのか疑問ですよね。
Apple watchの心拍数計測の精度については過去の記事を参考にしていただければと思いますが、ここでは簡単に要点のみ触れていきます。
Apple Watchの心拍数計測の精度は高いです。特に安静時は病院で使用する心電図との誤差はかなり小さいと言えます。
ただし、Apple Watchでの脈拍計測の弱点は、モーションアーチファクトの影響を受ける事です。
つまり、腕の振りが大きかったり、密着が保てていないと誤差がでます。
高心拍数の通知が出た時は、まずは、Apple Watchが腕にきちんとついていたか、高心拍数と通知されたところだけ外れ値的に高い値になっていないかを確認しましょう。
高い心拍数の原因
心拍数が高い事を医学的には頻脈と呼びます。脈拍の正常値は60-100回/分ですので、100回/分以上は脈が高い事になりますが、100回/分を超えると病気というわけでありません。個人差もありますし、一時的に高くなる事は当たり前ですのでご安心を。
一般的に心拍数が高くなる原因は以下のようなものが考えられます。
①運動
当たり前ですよね。走ると息が上がって心臓はバクバクするようになり心拍数が上がります。でも、日常生活で歩くだけでも結構心拍数が上がっているのを自覚している方は少ないのではないでしょうか?
私は心臓病の患者さんのお住いの地域に行き、一緒に駅の階段や坂道を上がって心拍数を計測したことがあります。
階段50段ほどでも一気にあがると70台だった脈拍は110台まであがっていました。
Apple Watchの通知では運動時の脈拍の情報は無視できるようにはなっていますが、完ぺきではありません。階段や坂道を歩いている時などに通知がでる可能性はあります。
②感情的なストレス
これは私が良く体験してることです。私は高心拍数設定を100回/分にしていますが、月に何度か通知を受けます。それは、たいてい座って偉い人と対談をしている時です。
責任を持って発言する必要があり、手に汗を握る状況で高心拍通知を受け取ります。緊張している事に気づかされ、深呼吸をする機会になるのでありがたいです。
スポーツ観戦中に脈拍があがるのもこれにあたります。
③カフェイン・アルコール
カフェイン・アルコールでも心拍数は上がります。時には、飲み過ぎているだけで高心拍の通知がでるかもしれません。
④心臓病や不整脈などの医学的な問題
上記の問題でない場合は、病気のサインである可能性があります。心不全や肺塞栓症でも心拍数は上昇します。
不整脈は徐脈性不整脈(脈が遅くなること)と頻脈性不整脈(脈が速くなる事)があり、高心拍の通知は頻脈性不整脈のサインかもしれません。
動機、胸の痛みや息切れ、などの症状が伴う場合は、心臓病や不整脈の可能性がありますので、早めに医師の相談する方がよいでしょう。
⑤心臓病以外の医学的な問題
心拍数の上昇は心臓以外にも出現します。典型的なのは甲状腺や副腎の機能亢進で心拍数を上げるホルモンが分泌されている状態です。
即時の対処法:通知を受けた直後に行うべきこと
高い心拍数の通知を受けたら、まずは落ち着いて深呼吸をし、状況を冷静に評価しましょう。可能であれば、手動で心拍数を測定し、数分間休息してから再測定してみてください。これにより、一時的な上昇かどうかを判断することができます。また、その時の活動内容や感じているストレスのレベルを考慮することも重要です。もし心拍数が高い状態が続く場合や、他の症状がある場合は、医療機関を受診することを検討してください。
不整脈を疑う時には、心電図の計測ができる方は、通知が出た時にアプリをすぐに起動して心電図を記録しておくと役に立つと思います。
不整脈は止まってしまっては、その後病院で心電図をとっても何も証拠がなく診断できない事が多々あります。
不整脈を現行犯逮捕してもらえると、病院で診療する医師も助かります。
医師との連携:専門家の助言を求める
通知が頻繁に発生する場合や、他の症状が伴う場合は、医師に相談することが重要です。Apple Watchのデータを医師と共有し、専門家の意見を求めましょう。心拍数のデータを見せてもらえると、「いつもはこれぐらいの心拍数なのに最近妙に高い」「時々突発的に脈が高くなっている」などの評価ができると思います。ただし、脈拍の記録が5分程度の間隔があったり、階段を登るだけでも脈は上がるので、なかなか正確に判断するのは難しいです。
ですので、必要に応じてさらなる検査を勧める事になると思います。心電図や心臓超音波などの検査を通じて、心臓の健康状態をより詳細に評価することが可能です。
心拍数をより正確に評価するためにホルター心電図検査といって24時間心電図を付けて生活してもらう検査が実施するかもしれません。
なにか病気が同定されれば、必要に応じて薬物療法を提案することになります。
Apple Watchの設定とカスタマイズ
Apple Watchの心拍数通知は、個々の健康状態やライフスタイルに合わせてカスタマイズすることができます。iPhone内の「Watchのアプリ」を起動→「通知」→「心臓」から、通知の閾値を調整することが可能です。
また、通知をオフにすることもできます。このカスタマイズ機能を利用することで、不必要な心配を避けつつ、重要な健康情報を見逃さないようにすることができます。ただし、これらの設定はあくまで補助的なものであり、医療機器に代わるものではないことを理解しておくことが重要です。
まとめ:Apple Watchを賢く活用する
Apple Watchの心拍数監視機能は、日常生活における健康管理の強力なツールです。しかし、これは医療機器ではなく、あくまで健康状態の一部を把握するための補助的な手段です。心拍数のデータを活用し、必要に応じて医師の助言を求めることが、健康管理の鍵となります。また、心拍数の変動は多くの要因によって影響を受けるため、通知を受けた際には状況を総合的に考えて判断しましょう!
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