最近固いものが食べられなくなった、と感じることはありませんか?
固いものが食べられないから、と柔らかいものばかり食べていませんか?
それは、オーラルフレイルのサインかもしれません。
高齢化が進む中で、サルコペニアやフレイルに注目が集まっています。
サルコペニアやフレイル対策の基本は「運動」と「食事」です。適切な強度で運動を行い、しっかりと栄養を摂ることで筋力や身体機能を維持することができます。
しかし、“食べる能力”も加齢とともに低下してしまうことがあります。食べる能力の些細な低下を見逃さず、しっかりと対策を行うことが非常に重要です。
今回はそんな“食べる能力”の低下を表す、「オーラルフレイル」について解説します。
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルは、口を表す「Oral」と、虚弱を表す「Frailty」を合わせた造語で「口の虚弱化」という意味です。加齢に伴い口の中の機能(歯の数、飲み込む力、舌の動きなど)が低下すると、食べる能力が低下し、身体機能へも悪影響を及ぼす可能性があります。
以下のような些細な機能低下を見逃さないようにする必要があります。
- むせる、食べこぼす
- 食欲の低下、食事摂取量の低下
- 柔らかいものばかり食べている
- 滑舌が悪い
- 口の中が乾く、口臭がする
- 自分の歯が少ない、顎の力が弱い
決して間違った考え方ではありませんが、柔らかいものばかり食べていると“噛む力”が衰えていき、さらにオーラルフレイルが進行してしまう悪循環に陥ってしまいます。
オーラルフレイルの危険性
Tanakaらは2044人の高齢者(平均73歳)を対象に、口腔機能が低下している人とそうでない人で、身体機能や要介護認定、死亡してしまうリスクについて、45ヶ月間にわたって調査を行なっています。
この研究では、
- 残っている自身の歯の本数(20本以上あるかどうか)
- 噛む力
- 舌で押し返す力
- 滑舌
- 硬いものを食べにくくなっていないか
- お茶や汁物でむせないか
の6つの項目を評価しています。この6項目のうち、1~2項目に該当すると「オーラルプレフレイル(=オーラルフレイルの前段階))、3項目で基準を下回っている場合「オーラルフレイル」として定義しています。
その結果、調査開始時点で50%の人がオーラルフレイルの前段階であり、16%の人がオーラルフレイルに該当するとしています。
そして、45ヶ月間の調査を行なった結果、オーラルフレイルの方は、身体的フレイルになる可能性は2.4倍、サルコペニアになる可能性は2.1倍、要介護認定となる可能性は2.4倍、さまざまな原因で死亡する可能性が2.1倍高くなるとされています。
オーラルフレイルの簡単チェック方法
オーラルフレイルの確立された評価方法はなく、その状態に合わせてさまざまな検査を行う必要があります。
オーラルフレイルの初期段階では、先ほどのTanakaらの報告で行われた6つの項目(①歯の本数、②噛む力、③舌で押し返す力、④滑舌、⑤硬いものを食べにくくなっていないか、⑥お茶や汁物でむせないか)を確認する方法と、以下の質問項目に答える方法があります。
質問項目 | はい | いいえ |
半年前と比べて、かたいものが食べにくくなった | 2 | |
お茶や汁物でむせることがある | 2 | |
義歯を使用している | 2 | |
口の乾きが気になる | 1 | |
半年前と比べて、外出の頻度が減った | 1 | |
さきいか・たくあんくらいの硬さの食べ物が噛める | 1 | |
1日に2回以上歯を磨く | 1 | |
1年に1回以上は歯科医院を受診している | 1 |
それぞれ当てはまるところに書いてある数字を合計してください。
もし4点以上である場合は、オーラルフレイルの危険性が高い、と判断されます。
また、点数が1点上がるごとに、4年後にオーラルフレイルになる可能性が32%増加し、介護を必要とする可能性が7%増加する、と報告されています。
オーラルフレイル対策
オーラルフレイルの原因として、噛む力の低下、舌の動きや力の低下、飲み込む力の低下、滑舌の低下などが挙げられます。それぞれに合わせた対応を行う必要があります。
日本歯科医師会のホームページでは、オーラルフレイル対策のための口腔体操が紹介されています。https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/
また、柔らかいものばかり食べるのではなく、ある程度の固さがある食べ物を取り入れることも重要です。さまざまな食品を、しっかり噛んで食べるよう意識するだけでも効果があります。
まとめ
- オーラルフレイルは身体機能の低下に関係します
- 口に関する些細な機能低下を見逃さないようにしましょう
- 柔らかいものばかり食べず、一品だけでも噛みごたえのあるものを取り入れるようにしましょう