心臓病など病気についての基礎知識

【医師執筆】大動脈解離とは?知っておくべき事実と対策を分かりやすく解説

はじめに:大動脈解離とその重要性

大動脈解離は、血管の内膜が破れて血液が血管壁に流れ込む重大な状態です。

この記事では、大動脈解離の原因、症状、治療法、そして何より重要な予防策について、わかりやすく解説します。

原因とリスクファクター:どうして起こるのか

大動脈解離の主な原因は、長年の高血圧です。

大動脈は弾力がある管で、心臓から送り出された血液が通ります。心臓は1日に10万回拍動し、そのたびに大動脈に血液の圧がかかっています。

高い圧をかけて酷使していると、ある日突然亀裂が入ることがあります。

身近な例でいうと、自転車のチューブがパンクするようなものです。自転車のタイヤにはチューブが入っており、空気がパンパンに入っています。乗り続けてタイヤに負荷がかかると、ある日突然パンクすることがあります。

空気を入れる際には、空気を入れすぎないようにするのも、パンクを防ぐためです。

自転車のチューブに圧をかけ続けるとパンクするように、大動脈にも圧をかけ続けると破れやすくなります。

もう一つの主要なリスク要因は喫煙です。喫煙は有名な動脈硬化因子であり、大動脈にも大きな影響を与えます。喫煙者は大動脈解離を起こしやすくなります。

最近の研究では、遺伝的な要因も関与していることが示されています。家族に大動脈解離を発症した方がいる場合は特に注意が必要です。生まれつき大動脈がもろく破れやすい体質を持っている可能性があります。

大動脈解離は、年を重ねるほど発症する確率が高くなります。先ほどの自転車のタイヤの例を考えても、長く使ったタイヤは新しいタイヤよりパンクしやすいのと同様、長年使われた大動脈も少しずつ劣化していきます。

日本から最近発表された論文によれば、以下のように40代ごろを境に大動脈解離の発症するようになり、年を重ねるごとに発症率は右肩上がりです。

シニア世代の方、要注意です!

JACC Adv. 2023 Oct, 2 (8) 100623 より転用

症状の認識:いち早く気づくために

大動脈解離の症状は多岐にわたりますが、最も一般的なのは突然の激しい胸痛や背中の痛みです。スイッチが入ったように急激に痛みができます。

大動脈が裂けていますので、「裂けるような痛み」と表現する方もいます。

また大動脈の上流から解離が始まり、徐々に下流の方に裂け目が進展するので、上から下に痛みが移動するというのも特徴の一つです。

この他にも、冷や汗、呼吸困難、失神なども起こり得ますし、逆に症状があまり出ない方もいます。怪しい症状が出た際には、迅速に医療機関への受診が必要です。

治療法と救急時の対応:どのように対処するか

治療法は症状の重さによって異なりますが、すぐに手術が必要な場合が多々あります。

自転車のタイヤがパンクした時もそのまま放っておいて乗り続けると、タイヤが修復できないほど傷んでタイヤ自体を取り換える羽目になりますよね。

大動脈はあなたの体のライフライン。自転車のタイヤなんかとは比べ物にならないほど早めに対処する必要があります

タイヤはまた買えばいいですが、あなたの命は買えません。

大動脈解離が起こると、今まで圧がかかっていなかった血管の壁の内部にどっと血液が押し寄せ、瞬く間に亀裂を大きくしていきます。

血管の亀裂が多くなればその分血管はもろくなるので、破裂することがあります。

そうすると、血液の循環は壊滅します。大動脈を通っていたすべての血液は血管の外に漏れ出るだけ、脳にも、内臓にも十分な血液は運べません。

今でも忘れない医師5年目の出来事をお話します。

まだ働き盛りの中年の男性が救急搬送されてきました。ERのベッドに患者さんを移動させ、診察を始めた時に、いきなり患者さんの胸が膨張してきたんです。

状態も急激に変化し、患者さんはそのまま亡くなってしまいましたが、死因は大動脈解離でした。

診療していた時に大動脈が破裂し血液が漏れ出て胸が盛り上がってきたんです。

繰り返しになりますが、大動脈解離を疑うような症状が出た時には、急いで病院を受診することが大切です

予防策:リスクを減らすために

大動脈解離の予防には、健康的な生活習慣が欠かせません。

禁煙、バランスの取れた食事、定期的な運動を心掛けましょう。

また、高血圧の管理、定期的な健康診断を受けることも大切です。

まとめ:大動脈解離への意識と対処法

大動脈解離は突然発症し、深刻な結果を招くことがありますが、適切な予防策と早期発見によりリスクを減らすことができます。この記事があなたやあなたの家族の健康維持に役立つ情報を提供し、安心して生活できる一助となれば幸いです。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で