ヘルスリテラシー向上(運動・栄養以外)

日本の医師はどれほど長時間労働なのか?

働き方関連法の改正が行われ、労働環境の是正が進められていますが、2024年から医師の働き方にもメスが入ります。

私も研修医時代は自己研鑽もかねて週に100時間ほど勤務をしていましたし、研修医が終わっても、若手のころは月に200時間残業などざらでした。

このような保険診療に携わる医療者の労働環境の改善にもつなげるためにも、我々は保険診療外のサービスを行っています。

そこで、現在の医師の労働について客観的に評価をしてみましたので、記事にまとめます。

日本の労働者の労働時間

医師の労働時間がどれほど長いのかを把握するために、まずは日本の労働者の労働時間につい把握しておきましょう。

まず参考にするのは厚生労働省による令和4年就労条件総合調査です。

アンケート対象は常用労働者 30 人以上を雇用する民営企業から無作為に抽出した6400社です。

産業横断的集計によれば、従業員が30人以上いる企業の割合は、約10%程度ですので、この時点でかなりセレクションがかかっている可能性はあるので解釈には注意が必要そうです。

いわゆる大企業の実情というイメージでみるといいかもしれません。

労働者の1人平均所定労働時間=39時間08分/週 です。いわゆる定時で帰るとという時間ですので、週40時間ぎりぎりまで勤務させる企業が多いようです。

産業別にみると、「金融業,保険業」が 38 時間 19 分で最も短く、「宿泊業,飲食サービス業」が 39 時間 52分で最も長いですが、大きな差ではないです。

どの職種も定時は週に40時間弱ということですね。

医師ももちろんそうです。契約上は1日8時間ほどの勤務時間ですが、契約時間よりも朝は早く夜は遅い。要は残業時間が問題です。

この調査では残業時間についてのデータはないので実態は見えないですね。

同じく厚生労働省の毎月勤労統計調査は残業時間も含めた労働時間も調べています。

規模30人以上の企業に加えて、規模5~29人の企業も調査対象に含まれています。(日本の企業の40%程度が調査対象になっていることになります

正社員の残業時間は平均して3.3時間/週程度です。パートタイムは0.5時間/週程度。

かなり短い印象を受けます。

調査票を記入するのが事業主ですし、調査票の記載の根拠となる証拠を示す必要もなさそうですし、値の信ぴょう性は判断が難しいですね・・・

いわゆるサービス残業は事業主は数字として把握していないでしょうから、サービス残業の時間が入っていないという限界もあります。

そこで、dodaという企業が行った調査を見てみましょう。

2023年8月23日~9月1日の間に、ビジネスパーソン15,000人へ調査が行われています。対象は正社員でネットリサーチ会社を利用したインターネット調査です。

インターネットにアクセスがなれていたり、アンケート調査の余裕がある人が回答するなどセレクションはあるでしょうが、大規模の調査ですのである程度の信頼度は担保できそうです。

これを見ると平均残業時間は週に5.5時間程度です。

よって、39時間+5.5時間で日本人は平均で週に44.5時間ほど勤務していると判断します。

残業が多い職種のラインキングは以下の通りです。

  1. プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連):10.5時間/週
  2. 設計監理/コンストラクションマネジメント:10.0時間/週
  3. 建築設計/デザイン/積算/測量:7.8時間/週
  4. ITコンサルタント(アプリ):7.5時間/週
  5. 店長:7.5時間/週

感覚的には、これでも、思ったより少ないなと感じました。

そもそもdodaの調査もアンケートに回答してきた人の結果になるので、もっともっと勤務時間が長くて余裕がない人はこの調査に含まれていないのかもしれません。

医師の勤務時間について

開業医の労働時間の実態に関して興味深い調査を見つけましたので共有します。

神奈川県保険医協会が行った、2018年に開業医(院長)3,364 名、開業歯科医師(院長)2,390 名の計5,754 名を対象に行ったアンケート調査です。

郵送による調査で、回答率は医科20.5%です。回答数 690 名の医療機関の主な診療科目は内科 42.6%(294 名)、整形外科 9.3%(64 名)、小児科 8.7%(60 名)です。

週単位の実労働時間は40-50時間が25%、50~60時間が17%、60時間以上が25%という結果でした。

残業が多い職種1位のプロデューサーは週に50時間ほどの勤務時間ですが、開業医の42%はそれを上回る勤務時間になっていました。

平均の概算を出してみると、平均は50.4時間になります(101時間以上と回答した人たちを除くと45.7時間です)。やはり、トップレベルに勤務時間が長い職種の1つであることは間違いありません。40時間未満の人は30%ほどです。

一般的に開業医よりも勤務医の方が激務であると言われています。

勤務医の労働時間の実態については、令和元年 の厚生労働省科学研究として行われた「医師の勤務実態調査」で詳しく検証されています。

紙媒体で141,880の医師に調査票を配布し、20,382人の医師から回答を得ています。

病院勤務医の回答が15,675で、その内記載漏れがなかった8,937(57.0%)が解析されています。

病院勤務医の平均勤務時間は男性で57時間35分で、女性で52時間16分です。この差は、男性の方が外科系の勤務時間が長い科に所属していることが多いからだと思います。

労働していなくても、オンコールだったり病棟からの患者対応用の依頼であったり、オフの時も気が抜けない時間もあります。

なぜ医師の勤務時間が長くなるのか?考察

医師1人当たりの業務量が多い

医師不足と世間では言われていますが、実は日本の病院のベッド数は多いということをご存じですか?

実はOECD加盟国の中で人口当たりの病床数は日本が1位です。

一方、人口当たり医師数は下から数番目です。

つまり、病院に入院する患者は多いが医師が少ない、医師1人あたりが負担する医療の量が多いのです。

これは国民皆保険により医療が広く提供されているその下で支える医療者に負担がかかってるということなのでしょう。

高齢化によって医学的な問題が増える

日本は未曽有の高齢化の波の中にいます。世界では最も深刻な高齢化の問題に直面しています。

高齢になると様々な臓器が弱ってきます。

高齢の人の割合が高くなると、それだけ病気の数が多くなります。

だから医者の仕事は増えるのです。

技術は発展してもやるべきことが増えている

科学技術の発展は人間の生活を助け、便利にしてくれます。

もちろん医療の領域でも様々な恩恵を受け、健康でいられる期間が長くなりました。

例えば、心筋梗塞の人に対してカテーテルの治療ができるようになり、今まで助けられなかった命を救うことができるようになりました。

例え夜中に発症しても、病院に行けば治療を受けることができます。

一方、医師はその技術の体得のために勉強をする必要がありますし、夜間に患者さんがきても大丈夫なように待機しているわけです・・・

大動脈狭窄症についてもカテーテルで治療ができるようになりました。だから、今まで手術に耐えれなかった高齢の人もカテーテルで治療できるようになりました。

その分、手技の件数が増加し、仕事量も増加します・・・

技術が発展して助けられる人が増えると、それは素晴らしいことですが、その医療の実現のため医療者は働いています。

それじゃあ医者の数を増やせばいいじゃないか

と思いませんか?

その思いの通り、実際に医者の数は徐々に増加しています。

令和2(2020)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況には以下のように医師数の増加がグラフ化されています。

医師の平均年齢が徐々に増加していることからも、高齢化に伴い、退職せずに働く医師が増えていることの影響は大きそうです。

医師の供給という観点では医師国家試験の合格者数が参考になるかもしれません。こちらも下の図のように増加傾向です。

医師国家試験対策予備校メックHPよりデータ引用

国も医学部の定員は2009年あたりから増加させてきているようで、国としても医師を増やす方向に政策を行っています。(医学部入学定員と地域枠の年次推移

医師の労働環境の改善に向けた我々の取り組み

医師を増やしても医師の労働環境はなかなか改善しない・・

保険診療に充てられる財源は限られているなか、どこまで医師を増やせばいいのか?そして増やせるのか?

そもそも、人手を増やして問題を解決するというやり方は、人口減少が続く日本では限界が来るのではないでしょうか?

そこで我々は、業務の効率化を行うこと、保険診療外でできる患者サポートを充実させ保険診療の業務を減らすことが解決の糸口になるのではないかと思っています。

我々が行うことを計画しているサービスは以下の2つです。

①心臓の負荷に不安を持っている方のためのApple watch専用アプリ

②適切な強度の適度な運動習慣を身に着けてもらい生活習慣病の予防・重症化予防をおこなうサービス

ご興味がある方は、お問合せ下さい。

まとめ

医師は開業医も勤務医も労働時間が長い

近年、医師の数は増加傾向であるが行う必要がある業務量が多しすぎる状態である

業務の効率化を行うこと、保険診療外でできる患者サポートを充実させ保険診療の業務を減らすことが解決の糸口になる可能性がある

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