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アルコールと心臓病の関係:医師監修、最新の医学研究のまとめ〜少量でも心臓病になる可能性が上がります〜

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お酒が楽しみなんですが、心臓が悪くても少しくらい飲めますよね?

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どれくらいだったら、心臓が悪くてもお酒を飲んでもいいですか?

アッキー

お酒はたとえ少量であっても、心臓病や脳卒中の原因となります。

「酒は百薬の長」ということわざがあり、適度な飲酒はどんな薬にもまさる効果がある、という意味で使われています。

令和元年の厚生労働省の調査によると、日本人で週1日以上の飲酒の習慣がある方は37.4%(男性54.4%、女性22.3%)いるとされていて、習慣的に飲酒をする方はある程度います。入院中の心臓病の方が退院するときに、今後の生活で気になることはないですか?と聞くと、どれくらいだったらお酒を飲んでもいいですか、とよく聞かれます。

習慣的な飲酒だけでなく、不定期に飲酒をする人も心臓病にとってはいい影響はありません。アルコールが心臓病にどのような影響を与えるかまとめてみました。

アルコールと心臓・血管への影響

アルコールを摂取すると、一時的に血圧が下がることが知られています。これはアルコールが分解されると生じる物質(アセトアルデヒド)が血管を広げる作用を持っているからです。ちなみに、アルコールを飲んだ後に顔が赤くなる人(フラッシング反応)は、このアセトアルデヒドを分解する酵素の作用が弱い人に多い症状です。そして、頭痛や吐き気といった「酔い」の状態になりやすいと言われており、日本人に多いことが知られています。

そして、アルコールを習慣的に飲んでいる人は、高血圧になりやすいこともわかっており、高血圧治療ガイドラインにおいても、飲酒制限について記載がされています。高血圧についてはこちらを参考にしてください。

ほかにもアルコールは心拍数を増加させ、アルコール濃度が濃くなればなるほど、心臓が収縮する力を弱めることもわかっています。大量、長期間のアルコール摂取により、心臓の筋肉が変性し、心不全、不整脈の出現に影響を与えると考えられています。特に“アルコール性心筋症”は、多量の飲酒によって発生する中毒性心筋症の一つで、1日80〜90gの純エタノール換算量(日本酒4〜5合、ビール中瓶4〜5本)を5年以上にわたり摂取すると発症するとされています(心筋症ガイドライン2018年改訂版より)。

アルコール摂取量と心臓病の関係

2018年のLancetの報告では、約60万人の飲酒を行っている人を対象に、アルコール摂取量と心臓病、脳卒中での死亡率との関係をまとめています。

その結果、1週間あたりのアルコール摂取量が100g(350mlの缶ビール約7本分、つまり1日あたり缶ビール1本分)増えると、脳卒中になる可能性は14%、心筋梗塞以外の冠動脈疾患になる可能性は6%、心不全になる可能性は10%増えると報告しています。一方で、心筋梗塞になる可能性は6%減る結果となりました。

しかし、最近は少量の飲酒によるリスクに関する報告もあります。

Kiranらは、イギリス人の健康に関するデータベースを使用してアルコール摂取量と心臓病の発生率について報告しています。解析対象となったのは、データベースに登録されている371,463人(平均年齢57歳、46%が男性)です。

その結果、以下の図のようにアルコールを全く摂取しない人と比べ、少量でもアルコールを摂取することで高血圧や心臓病(冠動脈疾患)になる可能性は高くなると報告しています。

下の図に照らし合わせると、毎日缶ビール3本飲むと、心筋梗塞などの冠動脈疾患になる可能性は約10%高くなります(下図右)。

また、Lancet (2018年)では、飲酒とさまざまな病気の関係性について、世界各国のデータについてまとめています。この報告では心臓病だけでなく、がん、糖尿病などの病気も含まれています。その結果、下図のようにアルコールの摂取量が増えるほど、さまざまな疾患にかかる可能性が高くなると報告されています。

以上を踏まえると、アルコールを摂取することで、心臓病だけでなく多くの病気になってしまう可能性が高くなると言えます。

どれくらいのアルコールなら摂取してもいいの?

アルコールの多量摂取は言うまでもなく有害です

一方で、少量の飲酒は心臓病になる可能性を下げるという報告は過去にありますが、最近は上述のように少量の飲酒であっても、心臓病での死亡率を下げる効果が認められないという報告も多くでています。

つまり、アルコールは飲まないに越したことはありませんし、仮に飲むとしてもできるだけ減らすことが望ましいです。どうしてもアルコールを飲みたい場合は必ず医師と相談してください。

心大血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインや冠動脈疾患の一時予防に関する診療ガイドラインでは、アルコール摂取量は25g /日以下にするよう記載されています。これは、ビール大瓶1本、日本酒1合、ワイン250ml程度に相当します。最近は酒類のラベルにアルコール量が記載されているので、必ず確認するようにしましょう。

まとめ

以前はアルコールの少量摂取は心臓病になる可能性を下げると言われていましたが、最近は少量であっても、心臓病を含む、さまざまな病気になる可能性が高くなることがわかっています。できるだけアルコールの摂取は控えることが望ましいです

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