ずぼら運動学

短時間の運動で心臓病のリスクを軽減!〜階段は無料のジムになりうる〜

心臓病の方に限らず、全ての方に運動を行うことが推奨されています。

WHOは65歳以上の方には中等度の強度の運動を週150〜300分行うことが勧められており、心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでは、心臓病の方は中等度の運動を週5日、150分以上行うべき、と記載されています。

ただ、この運動習慣を維持するのは大変ですよね。特に運動習慣がない方からすると、運動を習慣づけるだけでも大変ですし、これだけ時間をかける必要があると考えると、ハードルが高いですよね。

厚生労働省の調査(国民健康・栄養調査 令和1年度)によると、全く運動習慣がない人は全体の48.8%(男性:46.6%、女性:50.4%)もいます。特に20〜40歳代の働き盛りの人は運動習慣がないと回答している人が多いです。

そして、運動習慣がない人の主な理由は、「時間がない(38.1%)」、「面倒くさい(27.6%)」、といった理由が多くを占めています。

そんななか、最近は「ごく短時間の運動でも心臓病になる可能性を軽減させる」、という報告がいくつか出ています。今回はそれらの文献をまとめ、日々の生活に活かせるような提案をできればと思います。

1日数分の高強度の活動に心臓病予防効果がある

高強度の日常生活での活動が心臓病になる可能性を低くするという、イギリスのデータベースを参考にした報告はいくつかあります。

MN Ahmadi(Eur Heart J,2022)らは、7万1893人(平均62.5歳、男性44.1%)を対象に、手首に活動量を測定する機器を装着し、日々の活動量を平均5.9年にわたって測定した結果を報告しています。その結果、1週間あたり、約53分の高強度の活動であらゆる病気での死亡率を36%減らすことができ、少なくとも1週間あたり約20分の高強度の活動を行うことで、心臓病になるリスクを40%減らすことができる、と報告しています。

また、Stamatakis(Natur Med,2022)らは、2万5241人の運動習慣のない人(平均61.8歳、男性43.8%)を、6.9年間に渡り調査した結果を報告しています。スマートウォッチなどの活動量計を使用して、日々の活動の強度を調査した結果、運動習慣のない人が6メッツ以上の高強度の活動を、1日あたり、1〜2分×3セット行うと、心臓病になるリスクが48〜49%減少した、と報告しています。

MN Ahmadi(Lancet,2023)らは、2万5241人(平均61.8歳)のデータをもとに、1日あたりの中等度から高強度の活動時間(分)と主要心血管イベントの発生率との関係について報告しています。その結果、1〜3分の中等度〜高強度の活動を行うと、主要心血管イベントは29%減少させるとしています。

高強度の活動の例〜おすすめは階段!〜

では、高強度の活動とはどのようなものが該当するのでしょうか。

運動強度の目安として用いられる“METs /メッツ”で考えると、WHOなどの報告では、6METs以上の活動を高強度運動、として定義しています。

メッツについてはこちらを参考にしてください。

具体的に、日常生活の中における6メッツ以上の活動は、階段昇降や、重い荷物の運搬、ジョギング、スポーツ活動などが相当します

この中でも、“階段”はどこにでもあり、無料で、手軽に利用でき、普段の生活の中に取り入れやすいものになります。

そして、階段昇降を行うことで、心臓病を予防することができる、という報告もあります。

Songら(Atherosclerosis,2023)は、45万8860人(平均56歳、男性44.1%)分のデータを12.5年に渡り調査した結果をまとめています。その結果、全く階段を使用しない人に比べて、普段から階段を使用する人は心臓病になる可能性が低下する、と報告しています(下図)。

習慣的な運動が不要、というわけではありません。

このように、普段の生活の中に強度の高い活動を取り入れることで、心臓病になる可能性を減らすことはできます。

ただし、これは習慣的な運動が必要ない、というわけでは決してありません。

心臓病の方や高齢者に一般的に勧められている中等度の運動は、心臓の機能や血管の機能を改善し、高血圧や糖尿病などの心臓に悪影響を及ぼす病気の治療の根幹です。また、体力がある人ほど寿命が長くなることもわかっています。

普段の生活に運動を少しずつでも取り入れ、習慣化することが非常に重要です。

以下の記事も、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

  • 普段から高強度の運動を少しでも行っている人は、心臓病になりにくいことがわかっています。
  • 階段昇降は手軽に始められる、強度の強い運動です。
  • まずは1階分の階段昇降から始めてみることをオススメします。

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