ずぼら栄養学

適切な水分補給〜何をどれくらいとるべきか〜

暑い日々が続いており、熱中症で多くの人が救急搬送される、といったニュースが多く報道されるようになりました。

ただ外で過ごしているだけでも汗をかく季節ですが、運動中になるとさらに多くの汗をかきます。適切な水分補給が行われないと、体のさまざまな機能が低下してしまい、熱中症を代表とする事故が起きてしまいます。

熱中症についてはこちらにまとめています。

心臓病の方だけでなく、全ての人にとって健康な生活を送るために運動は重要な活動ですが、適切な水分補給を行わないと命に関わることがあります。

今回は、水分補給について詳しくまとめました。暑い夏場を乗り切るために是非一度目を通してみてください。

どれくらいの水分が必要か

人間の体重の約60%は水が占めています。細胞の中にある水は、エネルギーを作るための働きを担っており、細胞の外(血液や細胞の間)にある水分は、酸素や栄養素を運ぶ役割を担っています。

そして、汗をかくことで大量の水分が失われると、“脱水”の状態となり、体重の2%の水分が失われると、運動のパフォーマンスや認知機能が低下することが知られています。

脱水と心臓病の関係については、こちらを参考にしてください。

1日に必要な水分量は、日本人では体重1kgあたり、45〜56mlと報告されています(Watanabeら,2023)。つまり体重60kgの人では2.7~3.4Lの水分を摂取する必要があります。

ただし、これらをすべて飲んで摂取しなければいけない、というわけではありません。体の中で自然に作られる水や、呼吸などで取り込まれる水、食事に含まれる水分を合わせた量になります。これらを差し引くと、水などを飲んで摂取する水は、先ほどの量の約40%前後になります。つまり、体重60kgの人であれば、1.1~1.4Lくらいになります。

水分だけでなく電解質も重要です

体の中の水にはナトリウムやカリウムなどの成分も含まれています。このナトリウムやカリウムなどを“電解質”といい、細胞の中と外で電解質の濃さが異なることで、筋肉や神経を動かすことができるようになっています。

汗の成分は水だけでなく電解質も含まれるため、“汗をかいたから水を摂取すれば良い”、というわけでなく電解質も適切な量を摂取する必要があります。

1日あたりに必要な電解質の量は、ナトリウムが600mg、カリウムが1600mgと推定されており、実は日本人の平均的な食事をとっていれば不足することはない、と言われています。

もちろん、急に大量の汗をかいたりすると不足する可能性があるため、こまめに摂取することは重要です。

ナトリウムやカリウムの値が異常になると以下のような症状が出る可能性があります。

  • 高ナトリウム血症:喉の渇き、筋肉のひきつり、痙攣発作など
  • 高カリウム血症:不整脈、筋力低下、感覚障害など

  →大量の汗をかいた後(脱水時)に起こる可能性があります。

  • 低ナトリウム血症:頭痛、嘔吐、食欲不振、精神症状など

  →大量の水を飲んだ時に起こる可能性があります。

運動中、運動後の水分補給について

運動中の水分補給は、汗をかくことによる体重減少を2%以内に抑えることが重要で、こまめに水分を補給するように心がける必要があります。また、一度に大量の水を摂取すると、内臓への負担も大きくなります。

喉の渇きを感じる前からこまめに少量ずつの水を摂取するようにしましょう。

また、水分や電解質の体への吸収の速さは糖質も関わっていることが知られています。糖質の濃度が濃いと、水分は胃の中に長くとどまるようになり体の中に吸収するのに時間がかかるようになります。一方、小腸の中でナトリウムを吸収するためには適量の糖質があるほうが速やかに吸収されるようになります。

つまり、適切な濃度の糖質とナトリウムを含む飲料が最も効率よく体に吸収されることになり、糖質は3〜8%(100mlあたり3〜8g)、食塩は0.1~0.2%の濃度(ナトリウムに換算すると、飲料100mlあたり40~80mg )が推奨されています。(参考:日本スポーツ振興センター) 

多くの飲料の成分表示は100mlあたりの量が記載されているので、一度確認してみることをオススメします。

スポーツドリンクと経口補水液の違い

スーパーやドラッグストアには、さまざまな種類のスポーツドリンクが並んでいます。そしてその近くには、経口補水液も並んでいるのはよく目にするのではないでしょうか。

一般的に経口補水液は、スポーツドリンクよりもナトリウムやカリウムが多く入っており、反対に糖質の濃度は薄くなっています。つまり、体の中へ水や電解質をより速く吸収することができるため、熱中症や脱水状態の時の水分補給に用いることが望ましいとされています。

一方、スポーツドリンクは、経口補水液に比べるとナトリウムやカリウムの濃度は薄いのですが、その分糖質が多く含まれているので、エネルギー補給という面で経口補水液より優れています。

基礎疾患がある場合は注意が必要

運動中の水分補給は非常に重要なのですが、基礎疾患がある場合は注意が必要です。

例えば、スポーツドリンクは糖分を多く含んでいるため、糖尿病の方は注意が必要です。

また、ナトリウムの過剰摂取は血圧上昇の可能性がありますし、腎臓の機能が低下している場合はカリウムがうまく排泄されない可能性があるため要注意です。

心臓病の方は、基礎疾患を持っていることが多いため、スポーツドリンクや経口補水液の過剰摂取は控えたほうがいいため、一度医師とも相談してみてください。

まとめ

運動中のこまめな水分補給は、脱水や熱中症予防のために重要です。

ただし、スポーツドリンクや経口補水液の過剰摂取は心臓病の方には勧められない可能性があるため、一度医師とも相談してください。

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