ずぼら運動学

医学に基づく時短運動法【医師監修】 〜高強度インターバルトレーニング〜

心臓病はもちろんですが、多くの病気で運動を行うことは重要とされています。しかし、日本人で運動習慣のある人は男性では3人に1人、女性では4人に1人しかいません(令和元年国民健康・栄養調査)。

運動習慣が定着しない原因で最も多いのは、「時間の不足」です。男女とも4割弱の人が仕事や家事などが忙しくて運動する時間がない、と感じています。ちなみに運動習慣が定着しない理由の第2位は「面倒くさい」となっています。

WHOでは中等度の強度の運動は週150分以上、高強度では週75分以上の運動が推奨されていますが、皆さんはどれくらいの時間、運動できていますか?

普段から運動をしている人にとっては、それほど負担とならないかもしれませんが、運動習慣がない人にとってはハードルが高いな、と感じるかもしれません。

そんな人にとって、同じ時間でもより高い効果が出る方法、短時間でもしっかり効果が出る方法は魅力的ですよね。

そのような運動の知識、「スマート運動プロジェクト」の一つとして、高強度インターバルトレーニングについて解説します。

高強度インターバルトレーニングとは?

心臓病の方には、一般的に「中強度の持久性トレーニング」がすすめられています。この中強度の運動を継続することで、体力の改善、生活の質の改善、死亡率の軽減といった多くの効果を得ることができることは間違いありません。

中強度の運動強度の決め方はこちらの記事を参考にしてください。

そして心臓病の方にとって、体力がある人(最高酸素摂取量が高い人)の方が、より長生きできることもわかっています。その体力を改善させるには、より強度が高い運動を行う方が体力の改善度が高いこともわかっていますが、高い強度の運動を長時間続けるのは、正直キツイですよね。

高強度インターバルトレーニング(HIIT:High Intensity Interval Training)は、かなり強い強度の運動と少しの休憩(もしくは低強度の運動)を短時間の間、繰り返し行う運動方法となります。

Conraads et al.2015より引用改変

高強度インターバルトレーニングの有効性

高強度インターバルトレーニングはさまざまな疾患に対して有効であるという報告があります。

MM Atakan et al.2021より引用改変

心臓病に対する高強度インターバルトレーニングについても、多くの報告があります。

Conraadsらは冠動脈疾患患者に対する高強度インターバルトレーニングの効果について報告しています。中〜高強度(60−70%)の運動を40分弱続けて行うグループと、4分間の高強度トレーニング(90−95%)と中強度(50−70%)の運動を交互に行うグループ(合計38分間)を比較した結果、どちらも同じくらい体力の指標が改善した、としています。

また、McGregorらは、1分間の高強度運動(85%以上)と1分間の低強度運動(20−25%)を10セット実施(合計20分)するグループと、中強度の運動を20−40分持続して行うグループを比較した結果、高強度インターバルトレーニングを実施したグループの方が運動時間は短いにも関わらず体力の指標が大きく改善した、と報告しています。

心不全患者に対する高強度インターバルトレーニングの効果について、Callumらや、Yangらが複数の文献の結果をまとめたものをそれぞれ報告しています。その結果、高強度インターバルトレーニングを行なったグループの方が中強度の持続的なトレーニングを行なったグループよりも、体力の指標の改善率がより高かった、としています。

高強度インターバルトレーニングの安全性

非常に強い強度での運動を行う高強度インターバルトレーニングですが、安全に実施できるのかどうか、不安に感じる方もいらっしゃると思います。

安全性に関して、Wewegeらは高強度インターバルトレーニング実施中や実施後4時間以内に有害事象が発生していないか、複数の文献の結果をまとめたものを報告しています。

その結果、心不全患者において有害な不整脈の出現と失神がそれぞれ1件報告されています。それらを踏まえても、17,083回高強度インターバルトレーニングを行うと、危険な事故は1件起こるという確率となり、適切な環境の中で行う場合は比較的安全性の高いトレーニング方法になります。

高強度インターバルトレーニングの注意点

短時間で高い効果が得られる高強度インターバルトレーニングですが、どのような人に対しても有効か、といわれるとそうではありません。

まず、高強度インターバルトレーニングの適応になる方は、事故が起きる危険性が低い方に限られています。

具体的には以下のような方になります。

  • 適切な薬物療法が実施できている
  • 安静時や運動時の低血圧や高血圧がない
  • 心不全の増悪傾向がない
  • 心筋虚血がない(運動中の心電図変化や胸の痛みがない)
  • 転倒やけがの危険性が低い人

また、最初から高強度の運動を行うことはさまざまな危険性があるため、運動を開始する時の基本ですが、まずは医療従事者の監視下で、少し低めの強度から開始することが非常に重要です。

高強度インターバルトレーニングを実施していいのか、を主治医に確認し、決して自己判断で運動強度を上げることのないよう注意しましょう。

まとめ

高強度インターバルトレーニングは、短時間でより高い効果を得られる運動方法の一つです。

ただし、適応については必ず医師と相談し、医療従事者の監視下から始めるようにしましょう。

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