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健太郎
健康診断で「心拡大」と書かれていたんですが、「心肥大」というのもあるって聞いて…どう違うんでしょうか?
循環器内科医マル
とても良い質問ですね。どちらも「心臓が大きくなっている」という意味に聞こえますが、実は全く違う概念なんです。今日は図を使って分かりやすく説明していきましょう。
健康診断や病院で「心拡大」や「心肥大」という言葉を聞いたことはありませんか?どちらも心臓が大きくなっているという意味に思えますが、私たち循環器専門医はこの2つを明確に区別して診療を行っています。今回は、この違いについて詳しく解説していきます。
心拡大とは:心臓全体の大きさが拡大している状態
心拡大とは、心臓全体の大きさが拡大している状態を指します。では、何と比較して「拡大している」と判断するのでしょうか?
心拡大の診断方法
心拡大の診断は主に胸部X線写真(レントゲン)で行います。具体的な判定方法は以下の通りです:
- 胸郭の最大横径を測定:肋骨の一番広い部分での胸の横幅を測ります
- 心臓の最大横径を測定:心臓の影の一番幅の広い部分を測ります
- 心胸郭比(CTR)を計算:心臓の横幅÷胸郭の横幅×100
この心胸郭比が50%以上の場合を「心拡大」と診断します。つまり、胸の横幅に対して心臓の横幅が半分以上を占めている状態です。
心拡大が見つかった時の診療の流れ
- 健康診断や何らかの理由でレントゲン撮影
- 心臓の影が大きく見える
- 撮影時の条件や体位による見かけ上の拡大か、実際の病気による拡大かを判断
- 必要に応じて心エコーなどの追加検査を実施
心肥大とは:心臓の壁が厚くなっている状態
一方、心肥大とは心臓の壁(心筋)が厚くなっている状態を指します。
心肥大の診断方法
心肥大の診断は主に以下の方法で行われます:
- 心エコー検査:実際に心臓の壁の厚さを測定できる最も確実な方法
- 心電図:心肥大の所見が現れることがある
特に重要なのは左室(左心室)の壁の厚さです。心臓には4つの部屋がありますが、その中でも左室は最も力強く血液を送り出す部屋で、壁も最も厚い部分です。
正常な左室壁の厚さは1cm以下ですが、1.3cmや1.5cmなど1cmを超えて厚くなっている状態を心肥大と呼びます。
みどり
心エコーで壁が厚いと分かったら、病気があるということなんでしょうか?
心肥大が見つかった時の診療の流れ
- 心電図や血液検査(BNP値など)で異常を指摘
- 心エコー検査で実際の心臓の壁の厚さを確認
- 心肥大が確認された場合、原因を調べるためのさらなる検査を検討
- 心臓MRI
- 心臓カテーテル検査
- 核医学検査など
心拡大と心肥大の違いまとめ
重要なポイントをまとめておきましょう:
- どちらも病名ではなく、検査結果の所見です
- 心拡大:胸部X線で心臓の横幅が胸郭の50%以上を占める状態
- 心肥大:心エコーで心臓の壁(特に左室壁)が1cmを超えて厚くなった状態
それぞれの主な原因
**心拡大の原因**
- 撮影時の条件による見かけ上の拡大(病気ではない)
- 心疾患による実際の心臓の拡大
- 体格や胸郭の形状による個人差
**心肥大の原因**
- スポーツ心臓(アスリートなど運動習慣のある人の正常な適応)
- 高血圧による心臓への負担増加
- 弁膜症などの心疾患
- 体質的に壁が厚めの人
心拡大・心肥大と言われたらどうする?
循環器内科医マル
最も大切なのは、まずは専門医に相談することです。そして、十分な情報を提供していただくことが重要になります。
医師に伝えるべき重要な情報
**症状について**
- 息切れ:階段昇降時や軽い運動時の息苦しさ
- 動悸:心臓の鼓動を強く感じる
- 浮腫(むくみ):足首や下肢のむくみ
- 胸痛や胸部不快感
- 疲労感や倦怠感
**家族歴・既往歴について**
- 心臓病の家族歴
- 突然死の家族歴
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病
- 現在服用中の薬
- 過去の病気や手術歴
これらの情報は、病気の可能性を判断し、必要な検査を決定する上で非常に重要です。
まとめ
今回の重要なポイントをおさらいしましょう:
- 心拡大と心肥大は全く異なる概念
- どちらも検査結果の表現であり、病名ではない
- 病気があるかどうかは、さらなる検査と総合的な判断が必要
- 症状、既往歴、家族歴の情報が診断に重要
- 指摘されたら、まずは循環器専門医に相談を
健康診断で「心拡大」や「心肥大」を指摘されても、必ずしも病気があるわけではありません。しかし、重要な心疾患の早期発見につながる可能性もあるため、適切な医療機関で精密検査を受けることをお勧めします。
不安になりすぎず、しかし軽視もせず、正しい知識を持って専門医と相談していきましょう。






