僧帽弁閉鎖不全症とは?
「そうぼうべん へいさふぜんしょう」と読みます。
血液の流れに沿った簡単な概略図を描くと以下のような感じで、僧帽弁は、心臓弁の1つで、左房と左室の間に位置していて、左室から左房への血液の逆流を防いでいます。
弁膜症や心臓弁についての基本事項から知りたい方はこちらも合わせて参考にして下さい↓
閉鎖不全症とは、弁の閉まりが悪くなり、逆流が出現してしまう状態です。
人の流れを一方向にしているゲートのように、心臓弁は血液のながれを一方向にするために働いています。
心臓は血液を駆出するポンプですのでポンプに例えて説明します。
大動脈狭窄症の説明の時には自転車に空気を入れる、ポンプに例えましたが、逆流の事をイメージ違うポンプで例えてみます。
それは、竹でっぽうです。
私も子供のころ遊びました。自然のもので遊び道具ができるっ事にわくわくしたものです。
竹でっぽうはイラストのように、2つのパーツで構成されています。筒のパーツと柄のパーツです。水を筒の中にいれ、穴を上に向け、柄を勢いよく押すと水がぴゅーっと飛び出します。
水が勢いよく飛び出すのに、重要だったのが、柄の先に巻いてある布でした。
この布が筒の穴よりも緩すぎて小さいと、筒を上に向けた時に、筒から水が逆流してしまいますよね。
そうですね。弁の閉鎖不全症というのは、竹でっぽうから水を出そうとするように、血液を前に駆出している際に、後ろ側に血液が逃げて行ってしまう状態です。
想像してください。
貴方が持っている竹でっぽうの柄の布が劣化してが小さくなりすぎています。
水を押し出そうと柄を押した時にどうなりますか?
水は手元に戻ってきて、前に出ていく水の量は非常に少なくなりますね。
その落ちてしまった水の勢いを補うために、貴方はもっと力を入れて柄を押すかもしれません。1回の水の出が落ちた分、もっと水をくむ回数を増やす必要があるかもしれませんね。
いずれにしても、労力が必要ですね。
シューっとでていく竹でっぽうに治して、また遊びたいと思うようになるでしょう。
僧帽弁閉鎖不全症を放っておくと?
竹でっぽうの先の布は劣化したり緩くなると自然にもとに戻る事はないですよね。
新しい布を巻きなおす事でしょう。
僧帽弁も物理的に変化するとその変化は戻る事はありません。
1日10万回空いたり開いたりしている中で、徐々に劣化してしまいます。
徐々に逆流量が多くなり、心臓への負担も大きくなります。
重症の逆流量になってしまうと、心臓の中の圧力が高くなりすぎて、肺に水がたまり、息苦しくなります。いわゆる心不全です。
僧帽弁閉鎖不全症は治るの?
閉まりが悪くなった、僧帽弁を修理する事は可能です!
竹でっぽうの先の布が大きくなるような薬はないように、僧帽弁閉鎖不全症を治す薬はありません。
僧帽弁自体が変化して機能が損なわれている状態ですので、物理的に手を加えて修理する必要があります。
手術によって、がばがばになってしまったら僧帽弁を糸で縫って締め直したり、僧帽弁自体を人工の新しいものに変える方法があります。
最近では、カテーテルを使って、僧帽弁をクリップのように止めて、がばがばの状態を改善させるマイトラクリップという方法が開発され、広まってきています。
以下のサイトが比較的よくまとまっていると思いますので添付します。
川崎心臓病センター 僧帽弁閉鎖不全症の治療法「MitraClip™」
手術で大動脈弁は取り換えたとしても、心筋のダメージは一生ものであり、心臓病が治ったという事はないので注意が必要です。
長年の過労により傷んだ心筋はよくなることはないんです。。
その後も、心臓とうまく付き合っていけるように、運動を含めたよい生活習慣を身に付ける事が大事です。
まとめ
- 僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべん へいさふぜんしょう)は左室から左房への逆流を防いでいる僧帽弁の閉まりが悪くなり、逆流を許している状態
- 心臓は十分な血液を拍出するために、大変な重労働を課される事になり、ダメージを受ける
- 弁の劣化によるものであり、自然に良くなることはない
- 治療は手術がメインであるが最近カテーテルの治療も開始された
- 手術の後にも心筋のダメージは残るので、運動を含めたよい生活習慣を身に付ける事が大事