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「心房細動」といわれたら最初に読むべし。知識0の人へも分かりやすく医師が解説します。~読み方から学べる病気の解説④

循環器専門医マル

心房細動は年齢とともに発症率が増加する有病率が高い心臓病です。

私の祖母も心房細動で、抗凝固薬を内服中ですし、心不全になった事もあります。

不整脈は病名から病態をイメージする事が難しいので、すこしでもイメージがわくようにかみ砕いて説明します。

心房細動とは?

「しんぼうさいどう」と読みます。

心臓には2つの心室と2つの心房の合計4つの部屋がありますのが、その心房が細かく動く病気です。

意味がわかりませんね。

これを理解するには、心臓が筋肉の集合であり、電気の刺激がドミノ倒しのように伝わる事で規則正しく収縮している事を理解する必要があります。

上の写真のドミノがブロックの集まりであるように、心臓は心筋の集まりです。

そして、倒れたドミノが次のドミノを倒して、またその次も、その次も。。。。と倒れていくように、心筋に電気信号が届くと、心筋が収縮する、その際に電子信号を発して、接している心筋を収縮させるといった感じで順々に収縮していきます。

心臓が中の血液を外に押し出すためには、歯磨き粉を最後までの使い切る時のように、おしりからへこませて、どんどん中身を外に追い込んでいく必要があります。

ドミノと違う事は主に2点です。

①一連の心筋の収縮が起こる先頭にいる心筋は自ら収縮をはじめ、電気刺激を作り出すことができる。

上の写真のドミノで言うなら、左下の一番手前のドミノは、指で押さなくても自動的に倒れる事ができるんです。

②収縮した心筋は一定時間が経つと拡張し、その後再度電気刺激に反応できる状態になる。

ドミノでいれば、倒れたドミノが、手で立て直さなくても、自動で勝手に起き上がるんです。

この事により、心臓は、規則的に自ら収縮・拡張を続けています

心臓が中の血液を外に押し出すためには、奥から、どんどん中身を外に追い込んでいく必要があるので、

心筋は出口に遠いところから順々に収縮していきます。

写真で言えば、ドミノを全部倒すためには、ドミノの先頭から倒れる必要があるのと同じです。

ところが、不整脈が起こる際には、先頭ではなく違うところに刺激がはいり、順序良く心筋が収縮してくれません

ドミノでいれば、真ん中あたりのドミノをいたずらで指で押して、倒してしまうようなものです。

心房細動では、心房の中で、不規則な電気刺激が発生している状態です。

ドミノは変なところから倒されて、先頭のドミノが自分で倒れても、そこにはすでに倒れてしまったドミノがいるだけ。。

自動で起き上がったらまた違うところから倒される。

ドミノはきれいに倒れることなく、倒れるところと倒れないところがマダラになるイメージです。

なので、心房はまとまって収縮する事無く、部分部分でばらばらに収縮するようになり、結果、プルプルと震えるように、細かく動くのです。

心房細動を放っておくと?

心房細動を放っておくと起こり得る最も怖い事は以下の2つでしょう。

①脳梗塞などの塞栓症

心房の心筋が力を合わせて力強く収縮する代わりに、まだらにプルプル震えていると、血流のよどみができます。

そうするとヘドロのように血栓ができてしまうんです。

川の上流のように流れに勢いがあれば、ヘドロはたまりませんが、池のようにゆっくりと水が動いているようなところではヘドロがたまりますよね。

血栓は時とともに大きくなります。

大きくなればなるほど、もし飛んで行った際には、大きな血管を塞いでしまうので、その血管の先の臓器の影響が大きいです。

脳梗塞になれば、半身不随や命に関わる事になり得ます。

②心臓の負担がかかり心不全になる事

心房細動が出ていると、心臓は自分のペースで動くことができず、いたずらなペースで働かせられ続ける事になります。

徐々に疲れて、心房は大きく引き伸ばされ、心臓全体としても心不全に陥ります。

心房細動は治るの?

前述したように、心房細動が起こるのは、異常な電気刺激が生じているからで、それを止めればよさそうですが、

人間の体というのは、この異常な電気刺激だけのスイッチをoffにできるほど単純ではないです。

異常な電気刺激が起きにくくする薬はありますが、もちろん全員に効果があるわけではありません。

異常な電気刺激がでた後に、それが伝わりにくくするための薬もありますし、伝わっていくのを溝を作って遮断するカテーテルアブレーションという治療もあります。

アブレーションの成功率は発作性心房細動(ずっと続いているわけではなく時々出る心房細動)であれば1回の治療で8~9割、といわれています(https://doctorbook.jp/contents/321)。

薬物療法でもアブレーションでも、心房細動が長く続き、心筋のダメージが大きく心房が大きくなっていると効果が出にくいです。

早めに対応するのがいいでしょう。

また、血栓症予防の抗凝固薬も脳梗塞など血栓症が発症してしまってからでは遅いので、ある程度のリスクがある人は、早めに薬を使用するのがよいです。

まとめ

  • 心房細動は異常な電気刺激によって、心房はまとまって収縮する事無く、不規則なタイミングで収縮する病気である
  • 心房細動にって血栓症や心不全を起こすので治療が必要である
  • 薬物療法・アブレーションの治療法があるので早めに手を打つのが大切

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