我々は病院外で心臓病の方のための体操教室ハートクラブを開催しています。エアロビクス・筋力トレーニングを脈拍を計測しながら行う事で、その人にあった運動強度を設定し、適度な運動強度を体得してもらいます。
運動習慣をつけて頂くために自宅でも簡単にできるように”畳1畳でもできる運動”をコンセプトにプログラムを組んでいます。
昨日参加者から、「寝る前にこれをやるとよく眠れる」と安眠の効果もあったと好評を頂いたので紹介します。
心臓病の方をはじめ不眠症で悩んでいる方は多いです。
畳1畳でできるこの運動をぜひ試してみてください
寝る前にやる事で不眠がよくなった運動
不眠に効果的であったという体験談があった運動は、腹筋です。
ハートクラブではシニアの方が多く、できるだけ簡単な運動になるように工夫しています。
腹筋は、道具を使わず、床に寝て膝を立てて行います。
ポイントは呼吸です。
腹式呼吸を行い、息を吐くときに腹筋に力を入れお腹を凹ませます。
ヘソで床を押すように、お腹をペタンコにするように、腹筋に力を入れるんです。
息を吐ききったら、息を吸って腹筋への力を開放します。息は止めません。
これを深呼吸を行いながら10回やっています。
その運動が安眠に繋がった事の考察:腹式呼吸
この腹筋の運動では腹式呼吸を行ってもらいますが、これによって副次的に安眠の効果が得られたと推察します。
横隔膜や呼吸補助筋の運動で我々は息を吐いたり吸ったりしています。
腹式呼吸では胸式呼吸よりも横隔膜の運動が活発であるとされており、横隔膜の運動によって、内臓をマッサージする効果が生まれ、このことが血液循環を良くすると考えられています。
また、横隔膜の運動が腹腔神経叢を刺激することで副交感神経を活性化させると考えられています(呼吸法はなぜ健康によいのか?http://repository.tokaigakuen-u.ac.jp/dspace/bitstream/11334/303/1/kiyo_w016_06.pdf)
呼吸は自律神経を刺激し循環を調節しています。息を吸っている時に心拍数は増加(交感神経の活動)、息を吐いている時に心拍数は減少(副交感神経の活動)がおこります。(腹式呼吸が自律神経機能に与える影響)
我々の腹筋運動では息を吐ききってもらうため、息を吐く時間が長いので、副交感神経をより刺激できています。
上記より、腹式呼吸によって、副交感神経の活動性が高まり、リラックス効果が得られ安眠に繋がったのではないでしょうか。
注意点:息を止めていきまない事、ゆっくり行う事
不眠でお困りの方はこの運動を寝る前に取り入れてみたください。
ただし2つ注意点があります。
①息を止めていきまない
息を吐くときに腹筋に力を入れますが、息を吐ききったら、息を吸いはじめましょう。
息を止めて力むのはやりすぎです。
息を吐くと肺が圧縮され、肺の圧が上がり、肺に血液を送り出す右心の負荷に繋がります。右心の圧が上がると、静脈血も心臓に戻って来にくくなり、血液が返ってこないので、心拍出量も低下します。心拍出量の低下は血圧の低下を招き、血圧の低下を感知した圧受容体は交感神経の刺激を行い、今度は心拍出量や脈拍を上げる刺激を出します。
息を吐ききって止めてさらにお腹に力をいれ、肺の圧を上げる事はバルサルバ手技といわれており、病院では心臓超音波検査中に心臓に負荷をかけたい時などに用いています。
このように、長時間肺の圧を上げていると血行動態の変化が起きますので、呼吸は続けて、息は止めないようにしましょう。
②ゆっくり行う事
大きな呼吸を行っているので、一回の換気量は大きくなっています。ゆっくり呼吸を行い、呼吸回数を減らして過換気にならないようにしましょう。
過換気になると二酸化炭素の排出が多くなり、血液の二酸化炭素濃度が減少し、血液がアルカリ性に傾きます。そのことで、手足のしびれなどの症状が出ることがあります。
ゆっくり深呼吸を行うイメージで行ってください。
まとめ
- 腹筋は息を吐くときに力を入れるのがポイント
- 腹式呼吸を行う事で、交感神経の活性化に繋がり、不眠にも効果あり♪
- 運動の際には、息を止めない事!ゆっくり腹式呼吸を行う事!