ヘルスリテラシー向上(運動・栄養以外)

風邪の治し方。「たくさん寝て治す」の医学的な根拠

風邪が流行る季節になり、さっそく3歳の娘が風邪をひきました。40度まで熱が上がり、心配です。

早く治ってほしいので、たくさん食べてたくさん寝てもらえるようにしています。

私も子供のころ風邪をひいた時にや母と祖母にたくさん寝るように言われました。

そういえば、医師になって風邪の患者さんを診察するときには、対症療法の薬を出すことに加えて、「たくさん寝て早く治してくださいね」と言っていますが、その医学的な根拠について考えた事がありませんでした。

内科医マル

そこで、「なぜ、たくさん寝ることが風邪の治療になるのか?」についてまとめてみます。さらに、その知識を応用して、風邪の療養時の適切な過ごし方についても考察してみます。

寝る事による免疫力強化

風邪を引いたら、早めに寝てしっかり休むことで、免疫力を高めることができます。

多くの研究で睡眠による免疫力の変化が示されていますが、今回はこれは重要だと私が思ったものを紹介します。

参考文献はSleep and immune functionという2012年に発表された論文です。

いくつか総説を読みましたが、これが一番まとめっていました。

今までに1000回以上の引用されてる信頼度が高い論文です。

人の体はいろいろな仕組みが相互に関係しあっており、特に免疫機能は複雑ですので、睡眠だけの免疫力への効果を調べる事は大変難しいです。

例えば、24時間でセットされてる体内時計(概日リズム )によって、免疫系の変化がありますし、数々のホルモンが免疫系に作用しています。

休息時間中に睡眠をとる睡眠覚醒サイクルと、24時間静かな覚醒を続ける条件を比較し、繰り返し採血を行ったヒトの研究は、睡眠と概日リズム系の影響を切り離すのに最も適していると考えられています。

そのようなデザインの多くの研究から、睡眠は夜間覚醒していた場合と比較して、Th1サイトカインの産生を促進すると報告されています。

Th1細胞は、細菌やウィルスなどの異物に対して反応する免疫細胞で、Th1サイトカインはTh1細胞が出して免疫を活性化させる物質です。

よって、Th1サイトカインの増加は細菌やウィルスなどへの反応を強めます

睡眠といっても睡眠早期にはTh1とTh2サイトカインのバランスがTh1サイトカイン産生優位にシフトし、睡眠後期にはその優位性は減弱します。(Brain Behav Immun 2004.18:341–348)

風邪にかかって、免疫反応が続いている時は睡眠は免疫にどのような影響を与えるのでしょうか?

ワクチン接種後に産生される抗体の量を用いて、睡眠の免疫反応への影響を調べた研究があります。

A型肝炎のワクチンを接種した人を、夜寝ずに起きるグループと、夜寝るグループに分けて、検証した結果、

夜寝たグループの抗体の量は、夜寝ずに起きていたグループの2倍でした。(Psychosom Med 2006.65:831–835)

寝ることで力倍増です!

ワクチン接種後の睡眠早期の成長ホルモンとプロラクチンの放出とコルチゾール値の減少が、ワクチン接種後の抗原特異的Th1細胞の頻度と高い相関がある事が示されています。

コルチゾール、エピネフリン、ノンエピネフリンといったストレスホルモンの血中濃度は睡眠早期には低下し、睡眠後期には増加してきます。ストレスホルモンは夜間睡眠時に引き起こされる免疫系に対する反応を停止させると考えられています。

内科医マル

以上のことから、寝る事によって、細菌やウイルスと戦う免疫系の強化ができるという事が分かります。

アイコン名を入力

やっぱり寝るのは風邪の治療なんですね。

でも、ずっと寝ているわけではないでしょう?

寝ていな時はどう過ごせばいいのかしら?

リラックスして交感神経の活動を下げよう

確かにずっと寝ていられるわけではないので、睡眠をとらずとも、同じような変化が起きるとよさそうですよね。

そのためには、リラックス状態になり交感神経の活動を下げるといいと思います。

大雑把に理解すると睡眠というスイッチを入れることで、成長ホルモンとプロラクチンの上昇・ストレスホルモンの低下が得られるのがポイントでした。

リラックス状態になり交感神経の活動を下げると、成長ホルモンとプロラクチンの上昇が得られるとのは難しいかもしれませんが、ストレスホルモンの低下の効果はあります。

以下に、交感神経の活動の低下につながるやった方がいいことと、逆に交感神経が活性してしまう避けた方がいい事をまとめます。

結果、安眠にもつながる事になるでしょう。

交感神経の活動を低下させること=すべき事

交感神経の活動を下げるという事は、副交感神経を刺激する事でもあります。

代表的な行動は、朝に日光を浴びる、散歩する、軽いストレッチ、ヨガ、アロマ、入浴等で体を暖める、適度な睡眠、音楽を聴く、のんびり生活する、笑う などです。

迷走神経を適度に刺激するのも有効かもしれません。

迷走神経には脳神経の1つですが副交感神経が含まれています。

腹式呼吸で腹部の迷走神経を刺激し副交感神経を優位にして、交感神経の活動を下げることができます。

潜水反射といって、顔面を水につけると、顔面神経への刺激が入り結果的に迷走神経反射を引き起こすことが知られています(心臓1992年)。

顔面神経はおデコからアゴまで、守備範囲にしている神経で、熱が出た時におでこにぬれタオルや冷えピタを張る事でも刺激ができていると考えられられます。

冷たい水を飲むことも迷走神経を刺激して交感神経の活動を抑える事につながります。

交感神経の活動を亢進させてしまう事=避けるべき事

交感神経は戦う時に用いる神経であり、ストレス環境下で活動が亢進します。

騒音、つよい光の刺激、寒さなどは交感神経の活動を高めます。

以前スポーツ観戦も交感神経の活動を高ぶらせてしまうという事をまとめました。

テレビや映画などを見るとしても、興奮するような刺激がつよいものは避けた方がいいかもしれません。

カフェインは交感神経を刺激する効果があるので、コーヒー・紅茶・栄養ドリンクの飲み過ぎには注意ですね。

アルコール・たばこも交感神経の刺激が強いので控える方がよいでしょう。

熱があるときにおでこにぬれタオルを置くことでも交感神経の活動は抑えられるので理にかなった行動だったんですね。

ただ、寒いと感じるとよくないので布団はかけて温かくして寝てくださいね。

風邪で療養しているのに、コーヒーやアルコールを飲みながらスポーツ観戦とかだめですよ。

まとめ

  • 寝ることで、ウイルスや細菌感染に対する免疫の力がアップします。
  • 睡眠によって成長ホルモンとプロラクチンの上昇・ストレスホルモンの低下が得られるのがポイントです。
  • 交感神経の活動を下げるような療養生活が望ましいでしょう。
  • 交感神経の活動を下げる行動を心がけ、刺激してしまう行動を避けることで風邪を早く治しましょう!

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で