ずぼら運動学

運動で腎臓を守ろう!【心臓・腎臓のリハビリ専門家が解説!】

習慣的な運動は、心臓病の方にとって自覚症状を軽減し、より長生きができる様になるということは広く知られています。心臓リハビリテーションのガイドラインでも、心筋梗塞や心不全などほとんど全ての心臓病に対して、運動を行うことが強く推奨されています。

そして腎臓病の方にとっても、習慣的な運動の有効性が見直されており、今は適切な運動を行うことで腎臓の機能を維持・改善することができるといわれています。

今回は腎臓病と習慣的な運動の効果についてまとめます。

腎臓病と運動の効果

実は、以前は腎臓病の方に運動は推奨されていませんでした。運動を行うことで、腎臓へ送られる血液の量が減少したり、腎臓からタンパク質が漏れ出てしまうことが懸念されていたためです。

しかし、多くの研究が行われたことで、現在は習慣的な運動で腎臓を保護することができることがわかってきました。また、腎臓病の方の多くは心臓病や脳卒中で亡くなってしまうことが知られているため、心臓や全身の血管を守るためにも習慣的な運動は非常に重要なのです。

腎臓病の方にとって、習慣的な運動を行うことで、以下の様な効果を得ることができるとされています(上月,2006 を改変)

  • 体力の改善
  • 心臓の機能の改善:心臓の血液を送る機能の改善、自律神経のバランスが整うなど
  • 栄養状態の改善
  • 睡眠の質の改善
  • 不安、うつ、生活の質の改善
  • 死亡率の低下

運動で心臓と腎臓を守ろう!

習慣的な運動を行うことで、腎臓の機能が改善するという報告がいくつもあります。

特に心臓病も合併している人に対する効果について、日本での報告では、

  • 外来心臓リハビリテーションに参加していると、腎臓の機能を維持〜改善することができる(Takaya,2014)(Sasamoto,2021)
  • 1日の活動量が多い方が、腎臓の機能を改善する可能性がある(Sato,2021)
  • 心臓病となった時に、体力がある人の方が1年後も腎臓の機能が維持されやすい(Sato,2023)

と報告されています。もちろん海外においても同様に、運動をすることで腎臓の機能を維持〜改善すると多く報告されています。

また、Hamazakiらは心不全でリハビリテーションを行った人の体力・筋力の改善度について、腎臓の機能別に違いがあるかを検証しています。その結果、腎臓の機能が悪い人の方が、体力や筋力の改善度が小さかった、としています。

腎臓の機能も習慣的な運動によって維持〜改善することはできますが、悪くなり過ぎてしまうと十分な恩恵を受けることができないので、普段の生活を見直して、悪くなりすぎない様にしておくことが重要ですね。

どの様な運動が推奨されるのか

腎臓病の方に推奨されている運動は、基本的には心臓病の方と同様です。

参考:腎臓リハビリテーションガイドライン

【有酸素運動】

頻度:週3−5日

強度:「ややきつい」と感じる強度

時間:持続的な運動を1日20〜60分、続けてできない場合は短時間で繰り返し行っても良い

種類:ウォーキング、自転車漕ぎ、水泳など

【筋力トレーニング】

頻度:週2−3日

回数:10〜15回を1セットとし、体力に応じて何セット行ってもよい

種類:セラバンド、自重でのスクワットなど

【柔軟体操、ストレッチ】

頻度:週2−3回

強度:抵抗を感じたり、ややきつく感じるところまで伸長する

時間:関節ごとに60秒の静止

有酸素運動や筋力トレーニングの効果を高めるためには、タンパク質と糖質をセットで摂取することが勧められています。ただし、腎臓の機能によってはタンパク質の摂取量を制限する必要がある場合があるので、一度主治医とも相談してみてください。

注意点と対策

心臓病や腎臓病の方にとって、習慣的な運動は非常に重要な治療の一つといわれています。しかし、運動を行う際にはいくつか注意点があります。

運動を積極的に行うべきではない人

まず、運動を積極的に行うべきではない、という人もいます。心臓病の方で運動が勧められない方は、非常に状態が不安定な方であり早期に受診する必要があります。腎臓病で積極的に運動が勧められない方は、腎臓の機能の低下速度が速い人や、尿の中にタンパク質が多く漏れ出ている人であり、普段自宅で生活をおこなっている方も含まれる可能性があります。運動を行う前には一度主治医とも相談してください。

体力には個人差が大きい

次に、心臓病や腎臓病の方の体力は個人差が大きいといわれているので、最初からきつい運動を行うとかえって心臓や腎臓の機能を悪化させてしまう可能性があります。まずは短時間で強度の低い散歩などから開始し、徐々に運動時間を伸ばしていく様にしましょう。座りっぱなしの時間を短くすることも有効です!

歩数計を使用してみるのもいい手段の一つです。普段自分がどれくらい動いているのかを確認し、そこから少しずつ歩数を増やす様に意識してみましょう。具体的な数字を目標に設定すると、達成感もあがり運動が継続しやすくなります!

また、今の時期の様に暑い時期に屋外で運動する際には、熱中症や脱水にも注意が必要です。熱中症と脱水についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

まとめ

  • 腎臓病の方でも運動を行うことで腎臓の機能を維持〜改善することができる
  • 体力がある人、1日の活動量が多い人の方が腎臓の機能低下が緩やかになる
  • 有酸素運動と筋力トレーニングが推奨されている
  • 安全に運動を行うために、軽い運動から開始し少しずつ強度を上げていく

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