ずぼら運動学

理学療法士直伝運動のキホン【意識したい5つのポイント!】

運動を始めようと思うのですが、どんなことに注意して、どれくらいの運動をしていいのかがわかりません。

アッキー

運動を行うには安全かつ効果的である必要があります。我々は病気の状態や、体力に合わせて運動メニューを決めています。運動メニューを決める時の基本的な考え方についてまとめました。

心臓病や腎臓病の方にとって運動は再発予防や長生きをするために非常に重要です。しかし、ただ漠然と運動をしていても十分な効果は得られません。運動メニューを決める時、基本的な考え方があるので、今回はそのポイントについて解説します。

忘れてはいけない3つのポイント!

まず、運動の効果をしっかり得るために、絶対に忘れてはいけないポイントを3つ挙げます。

過負荷の原理

運動の効果を得るためには、ある程度の負荷をかける必要があります。楽に感じる強度で運動を続けていても、筋力や体力の改善にはつながりません。楽に感じる様になったら、トレーニングの回数やセット数を徐々に増やしていきましょう。

一方で心臓病の状態や、その人の身体の状態(体力がどれくらいあるか、関節痛はないか、など)によって適切な強度があるので、専門家と相談して運動強度を設定しましょう。

特異性の原理

これは、トレーニングの種類や部位に合わせて効果が出現する、という考え方です。目標とする動作があれば、それと同じ動作を行うことが最も効率的です。

例えば、椅子から立ち上がれる様になるためには、実際に椅子からの立ち上がり動作を反復したり、似た動きであるスクワットを繰り返し行いましょう。

下半身の筋力トレーニングばかり行なっていても、上半身の筋力は向上しません。全身を鍛えるためには、さまざまな部位のトレーニングを組み合わせる必要があります。また、筋肉は持久力を担当する筋肉と(赤筋)、大きな力の発揮を担当する筋肉(白筋)の2種類あります。素早く動ける様になりたい時は、筋トレを行う時の速さも意識すると、より効果を実感しやすくなります。

可逆性の原理

トレーニングを中止すると、これまで得られた効果は消失します。トレーニングの間隔が空きすぎると、前回行った分の効果がなくなってしまう可能性があります。定期的、かつ長期間にわたってトレーニングを継続できる様な工夫が大事です。

座りっぱなしの時間を無くし、すき間時間でトレーニングを行うことも重要です。

安全に行うために注意しておきたい2つのポイント!

心臓病の方は体力や筋力が低下している可能性が高いです。運動を行うことは非常に重要なのですが、負荷が強すぎるとかえって心臓病を悪化してしまう可能性があります。安全に行うためには以下の2つのポイントを守りましょう。

漸進性の原則

運動を行う時には、まずは慣れることが大事です。最初から強い強度で運動を行うと、心臓病の悪化だけでなく、関節痛の出現など悪影響を及ぼす可能性があります。

まずは低強度の運動から開始し、徐々に強度を上げていくこと。難易度も簡単なものから行い、複雑なトレーニングへと段階を踏みましょう。

例えば、転倒しない様にしたい場合、下半身の筋力だけでなくバランス能力を鍛える必要があります。この場合、最初から筋力とバランス能力を同時に鍛えるトレーニングを行うと、強度・難易度ともに高いため、かえって転倒したり、心臓に負荷がかかりすぎる可能性があります。まずは、筋力トレーニングとバランストレーニングを別々に、簡単なものから始め、慣れてきてから徐々に強度を上げ、最終的に複合的なトレーニングに移行することをオススメします。

個別性の原則

体力や心臓病の状態は一人一人違うので、その人に合った運動を行う必要があります。

下の図のように、心臓病の状態が悪かったり、体力がない方(グラフの左側)は安全にできる範囲が低くなっています。もし運動の効果が出る下限よりも安全性が低い場合は運動を行うべきではありません。一方、病気の状態が落ち着いて、体力もついてきている(グラフの右側)のであれば、安全にできる上限に近い強度での運動を行うことで、より効果を得やすくなります。

池上,1985を改変

最も重要なことは「安全」かつ「効果的」に運動を行うことです。そのため、医師や理学療法士といった専門家と相談して運動強度を設定しましょう。

運動処方

その人に合った、安全かつ有効な運動プログラムを作成することを「運動処方」と言います。心臓リハビリテーションでは有酸素運動と筋力トレーニング、ストレッチが中心となります。

この運動処方を行う際、私たちは以下の項目を意識して運動処方を行います。

  • 頻度(Frequency):1週間のうち何日運動するか
  • 強度(Intensity):体力を測定する検査の結果に基づいて適切な強度を調整します
  • 時間(Time):1回あたり何分運動するか
  • 種類(Type):長期的に継続できる運動の種類(ウォーキング、サイクリングなど)
  • 運動量(Volume):強度、頻度、時間をあわせて考えます。まとまった運動時間を確保できなくても、1日の運動時間の合計を目標設定します。
  • 漸増/改訂(Progression /Revision):体力の改善や病気の状態に合わせて運動処方を定期的に見直します。

心臓リハビリテーションのガイドラインで推奨されている運動は、中等度〜高強度の運動を週3〜5日、1回あたり20〜60分となっています。運動強度は心肺運動負荷試験という、体力を測定する検査の実施が推奨されていますが、他にも自覚的に「ややきつい」と感じる強度や、安静時の心拍数をもとに決める場合があります。

体力の付け方や測定方法については、こちらも参考にしてください。

まとめ

  • 運動の効果を得るためには、安全性が担保された範囲で、一定以上の運動負荷をかける必要がある
  • 運動は継続することが重要、休みすぎると効果がなくなります
  • 一人ひとりに合った運動強度を設定する
  • 必ず医師や理学療法士に相談をして、運動メニューを決めましょう。

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