先生には心臓はいい調子、と言われるんですが、最近なんだか疲れやすくなりました。やっぱり歳のせいだから仕方ないですよね。。
体力の低下をそのまま放っておくのは危険です!
適切な対処をして改善する必要があります。
最近、なんだか疲れやすくなった、以前よりも歩くのが遅くなった、などの症状はありませんか。もちろん、歳をとるにつれて体力や筋力は低下していきます。また、病気をきっかけに急激に体力・筋力が低下してしまうこともあります。これらを全て「歳のせいだから仕方ない」と考えてしまうのは非常に危険です。
日本人の平均寿命(令和3年)は男性81.47歳、女性87.57歳と報告されています。一方、健康で誰の手助けもなく生活ができる寿命を示す健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています(内閣府,高齢社会白書)。つまり、この約10年間は誰かの手助けが必要な期間になります。もちろん個人差はありますが、この期間が長ければ長いほど、自分の好きなこと・やりたいことができない可能性が高くなってしまいます。
この様に普段の生活に支障をきたすような身体機能・体力低下などを表す「フレイル」という言葉に注目が集まっています。
今回はフレイルについて簡単に解説します。原因と対策も紹介するのでプレイル予防にお役立て下さい!
フレイルとは?
フレイルとは、「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が増加し、障害、施設入所、死亡など負の転帰に陥りやすい状態」と定義されています。
フレイルには以下の3つの種類があります。
- 身体的フレイル:身体機能の低下
- 認知的フレイル:認知機能の低下
- 社会的フレイル:社会との繋がりが減少した状態
ここでは最も一般的な身体的フレイルについて解説します。
下の図の様に元気な状態から、加齢や病気の発症を契機に身体機能が低下して「フレイル」という状態になってしまいます。フレイルは介護を必要とする前段階と位置付けられています。
国立長寿医療研究センターHPより引用
フレイルは非常に怖い状態ではあるのですが、しっかりと対策をすればもとに戻ることもわかっています。フレイルになる前の対策はもちろんですが、なってからも適切な運動を行い、しっかりと栄養をとって早期にフレイルの状態を改善することが大事です。
フレイルの基準について
日本人における身体的フレイルの基準は以下の5項目になります。
- 体重減少:6ヶ月で2kg以上の(意図しない)体重減少
- 筋力低下:握力:男性<28kg、女性<18kg
- 疲労感:(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
- 歩行速度:通常歩行速度<1.0m/s
- 身体活動:①軽い運動・体操をしていますか?②定期的な運動・スポーツをしていますか?上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答
Satake.Geriatr Gerontol Int,2020:20(10):992-993
この5つの項目のうち、3項目以上に該当すると「フレイル」、1〜2項目に該当すると、フレイルの前段階である「プレフレイル」と診断されます。
握力については、こちらの記事も参考にしてみてください。
歩く速さについて、「1秒間で1m歩く速さ」といわれてもピンとこないかと思います。実はこの速さは、横断歩道を渡り切れるかどうか、の基準とされています。もちろん交通量の多い場所では長めに青信号の時間をとっていますが、普段余裕を持って渡りきれているかどうかを参考にしてみてはいかがでしょうか。
フレイルの原因と対策
フレイルの原因は以下のように様々あり、それらが相互に関係しあっています。加齢に伴うものだけでなく、環境的な要因も重要です。
- 加齢に伴う活動量の低下、社会交流機会の減少
- 身体機能の低下(歩く速さが遅くなった)
- 筋力の低下(握力の低下など)
- 認知機能の低下
- 疲れやすくなった、活力がなくなった
- 慢性的な疾患(心臓病、肺の病気など)
- 体重減少、食欲減少
- 収入、教育歴、家族歴など
フレイルは活動量の低下や食事摂取量の低下などが、互いに関連しあって「フレイルサイクル」という悪循環を形成してしまいます。その流れを断ち切ることが非常に重要です。
フレイル対策の基本は「しっかり食べて」、「しっかり運動をして」、「社会参加をする」ことです。
食事について、心臓病の方は塩分制限などの問題があり、食欲が低下している、とよく聞きます。しかし、しっかり食べないと運動の恩恵を受けられないだけでなく、筋肉を壊してエネルギーを作ろうとしてしまい、余計に体力が低下してしまう恐れがあります。
我々は「らくシオ」という減塩もできるレシピも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください!
運動の必要性については、他の記事でも多く書かせていただいています。すぐに運動習慣をつけることは非常に大変ですので、まずは座る時間を減らすところから開始してみましょう。
また、フレイルは社会とのつながりが減少することが入り口とも考えられています。社会とのつながりがなくなってしまうと、生活範囲が狭小化し不活発になってしまいます。そうなると運動量の減少や食欲の低下にもつながってしまいます。
我々が現在行なっているハートクラブでは、みなさんと同じように心臓病を持っている方が参加しています。みなさんがどんな生活の工夫をしているのか意見交換をするもよし、お互いに励まし合いながら運動を継続するのもいいと思います。
まとめ
高齢者が年々増加しており、フレイル対策が非常に重要な課題となっています。健康で楽しい生活を送るために、運動を習慣づけることが非常に重要です。適切な強度で、安全で効果的に運動を継続していきましょう。