再発予防・健康維持のための運動の知識

簡単に筋トレの効果を上げるコツ:休憩時間

心臓病の方にとって筋トレは欠かすことのできない運動です。

心臓リハビリテーションガイドラインでは、慢性的に心臓の機能が低下している方に対して、週2−3回、低強度〜中強度で、10~15回を1〜3セット実施することが推奨さています。

しかし、筋トレを行う際、セット間の「休憩時間」については言及されていません。今回は筋トレの効果を上げる「休憩時間」について、まとめました。

筋トレに慣れていない人は休憩時間が短い方が効果的

Hiranoらは、膝を伸ばす筋肉のトレーニングを、最大筋力の30%の重さで、休憩時間を変えて行った際の変化を比較しています。回数は10回×12セット、休憩時間は20秒・60秒・180秒の3つのグループで比較しています。

その結果、休憩時間が20秒・60秒のグループでは、3セット行った時点で、筋肉の厚みや筋活動の程度が増加したことを示しています。休憩が180秒だったグループでは、筋活動の変化は認められませんでした。

つまり、休憩時間が短い方がより多くの筋肉の線維を使ったトレーニングが実施できる、と言うことになります。

Finkらは、低強度(20回繰り返すことができる重さ)かつ休憩時間を短く(30秒)設定したグループと、高強度(8回繰り返すことができる重さ)で長めの休憩(3分)を取るグループでの筋トレの効果を比較しています。

その結果、休憩時間が短いグループの方が、筋肉の成長を促すために必要な成長ホルモンが、より早い段階で多く分泌され、筋肉の厚みが増加することがわかりました。

この2つの文献から、心リハで推奨されている低強度の筋トレでは、休憩時間が短くし、繰り返しトレーニングするほうが、より効果的である可能性が考えられます。

一方で、Grgicらは、休憩時間の違いが筋力に与える影響について、複数の文献の結果をまとめた報告をしています。ちなみに運動強度は1セットあたり約10回、1回あたり3セット前後行う強度で調整されているものが多く含まれています。

この報告によると、普段からトレーニングを行っている人は、長めの休憩(2分以上)を取る方が筋力を向上させる可能性があることを示しています。これは、短い休憩時間を設定すると、疲労などの影響で正しいトレーニングができなかったり、合計の運動量が減ってしまう可能性があるため、としています。

それに対し、あまりトレーニングを行っていない人は、短めの休憩時間(1−2分)でも十分である可能性を示唆しています。実は、休憩時間が短い方が効果的と言う報告や、休憩時間が長い方が効果があったと言う報告など結果は多岐にわたっていました。

解説の中には以下の点について言及されていました。

  • 男女によって必要な休憩時間が異なっていた(女性の方が短時間で回復した)
  • 休憩時間が短い方が、トレーニングに要する時間が短いため習慣化しやすい可能性
  • 休憩時間よりも、しっかりと疲労を感じるまで負荷をかけられているかどうかが重要
  • 運動方法によって必要な休憩時間が異なる可能性

運動習慣がない人は、まず運動を習慣化し、継続することが重要です。休憩時間を長めに設定すると、その分全体の運動時間が長くなります。なかなか運動が習慣づけられない人にとっては、短時間でより効果を高められる方がいいですよね。

3秒の筋トレでも筋トレの効果が得られる可能性があるので、一度こちらの記事も参考にしてみてください。

運動に慣れてきたら、次はしっかりと疲労を感じるように、筋トレの種目や強度、休憩時間を調整しましょう。

筋力を向上させるには、重さ・1セットあたりの回数・何セット行うか、を掛け合わせて、できるだけ大きくする必要があります。上記の休憩時間はあくまで目安です。運動を行うときに意識したいポイントについてはこちらも参考にしてみてください。

運動前後での血圧の変化や、心拍数の変化を把握した上で休憩時間を調整することが望ましいです。まずは医師や理学療法士の監視下で行うことをオススメします。

こんな時は要注意

慢性的に心臓の機能が低下している方の場合、以下のような症状がある場合は要注意です。

  • 3日間で2kg以上の体重増加
  • 運動をしても収縮期血圧が20mmHg以上低下し、手足が冷たくなる
  • 胸の違和感を感じる
  • いつもよりも心拍数が高く、より強い疲労感を感じる

このような時は運動強度が強すぎたり、心臓病が悪化している可能性があるので、医師に相談することをお勧めします。心不全悪化の初期症状については、こちらにまとめてあります。

まとめ

  • 一番大事なのは、運動を習慣化すること
  • 心リハで推奨されている低強度の筋トレを行う時は、短い休憩時間で繰り返す方が効果的である可能性がある
  • 「ややきつい」と感じられるように、一人一人の体力に応じて調整が必要
  • 何らかの自覚症状の変化を感じた時は、早めに医師に相談しましょう

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