ずぼら運動学

SPPB:自宅でできる身体機能検査【計算フォーム付】

SPPBとは

SPPBは、“Short Physical Performance Battery”のことで、手軽に身体機能をチェックすることができるテストになります。簡単、かつ短時間で身体機能をチェックでき、再入院率や将来的に身体機能がどれくらい低下するかを予測できるため、リハビリテーション領域ではよく用いられるテストの一つです。

必要なものは

  • 4m歩くことができるスペース
  • 40cmくらいの高さの椅子
  • ストップウォッチ

の3つだけです。

SPPBでは、

  • バランステスト
  • 歩行テスト
  • 5回椅子立ち上がりテスト

の3つのテストを実施します。それぞれ最大4点、合計12点満点となります。測定自体は5分程度で実施できます。

それぞれのテストについて解説していきます。

バランステスト

バランステストでは、以下の3つの姿勢を10秒間保持できるかどうかを評価します。

  1. 閉脚立位 :左右のつま先と踵をくっつけた状態で立つ
  2. セミタンデム立位 :どちらか一方の踵を、反対の足のつま先の横にくっつけて立つ
  3. タンデム立位 :綱渡りのように、どちらかの足の踵を、反対の足のつま先の前にくっつけて立つ

閉脚立位、セミタンデム立位は、10秒間保持できたらそれぞれ1点となります。

タンデム立位は、3秒間保持できたら1点、10秒間保持できたら2点となります。

閉脚立位とタンデム立位で10秒間保持できなかった場合は、タンデム立位は実施しません。

不安定な姿勢を保持するテストですので、転倒には十分注意が必要です。周りに危険なものがないか十分に注意して行なってください。

歩行テスト

いつもの歩く速さで、4mの距離を歩く時間を測定します。

杖などは使用しても構いません。2回測定し、速い方の結果で点数をつけます。

点数は以下のように決めます。

  • 4.82秒未満 :4点
  • 4.82秒〜6.20秒 :3点
  • 6.21秒〜8.70秒 :2点
  • 8.71秒以上 :1点
  • 実施困難 :0点

5回椅子立ち上がりテスト

このテストは下肢筋力・パワーをチェックするテストです。

まず、40cmの高さの椅子に座り、腕は胸の前で組みます。手は組んだまま、しっかりと膝を伸ばして、座る、という動作を繰り返し、その所要時間を測定します。

測定する際は、開始の合図から、5回目にしっかりと立つまでの時間を測定します。

完全に膝を伸ばして立ち、お尻が座面にしっかりつくように行うことがポイントです。

注意点として、勢いよく実施すると、椅子が動いてしまい転倒する可能性があるため注意してください。

点数は以下のように決めます。

  • 11.19秒未満 :4点
  • 11.20秒〜13.69秒 :3点
  • 13.70秒〜16.69秒 :2点
  • 16.70秒以上 :1点
  • 60秒以上、もしくは実施困難 :0点

結果の解釈について

SPPBを行うと、バランス能力・歩行速度・下肢筋力をそれぞれ評価することができます。合計点数が低いほど、身体機能が低下している、ということになります。

筋肉量が減少した状態を表す「サルコペニア」の診断基準との一つとして、このSPPBの結果が含まれています。下の図に示しています。

椅子立ち上がりテストが12秒以上、もしくはSPPBの合計点数が9点以下だとサルコペニアに該当する可能性があります。また、歩行距離は異なりますが、歩行速度の低下にも気をつける必要があります。

心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2021年改訂版より引用

地域在住高齢者において、臨床的に効果があったと解釈される点数は0.5点とされています。つまり、運動を継続した結果、SPPBの合計点数が1点でもよくなると、身体機能は改善した、と判断されます。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16696738/

また、歩行速度は生命予後の関係について多くの報告がされています。60歳以上の心疾患患者では0.94m/s以下、つまり4m歩行テストで4.26秒以上かかってしまうと予後が悪い、とされています。反対に、65歳以上の高齢者では、歩行速度が0.1m/s改善すると予後も良くなる、と報告されています。(心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2021年改訂版)

簡単に身体機能を評価できるSPPBですが、一つ弱点があります。それは、体力や筋力が維持されている人の多くは、このテストでは容易に満点となってしまう点です。つまり、テストの点数だけでは、どれくらい良くなったのか、という判断が難しいのです。可能であれば、それぞれのテストを、どれくらいの時間で実施できたかまで記録しておくと、身体機能の変化が捉えやすいです。

SPPBの計算フォームを作成しました

ここまで、SPPBについて説明させて頂きました。なかなか数字が細かくて覚えられそうにありませんよね・・・

そこで、簡単に点数が計算できるように、フォームを作成しましたので、ぜひご活用下さい!


まとめ

SPPBは手軽に実施できる身体機能のテストです。他にも6分間歩行テストも、ご自身の体力を簡単に確認することができるテストになります。6分間歩行テストについてはこちらも参照してください。

運動を行った結果として、身体機能が良くなったと確認できるとやる気アップにもつながります。また、あまり改善していない場合でも運動メニューを見直すいいきっかけにもなると思います。

運動に対するモチベーションを維持するために、定期的にご自身の身体機能チェックを行うことをお勧めします!

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