再発予防・健康維持のための運動の知識

【理学療法士が解説】心臓病の方に欠かせない筋トレのさまざまな効果

心臓病の方にとって運動を行うことが欠かせないのは言うまでもありません。

年齢を重ねるごとに筋力は弱くなっていってしまうため、筋力を維持するためには筋トレは欠かすことができません。

筋力が低下するとフレイルサルコペニアという状態になってしまい、日常生活を送ることが困難になるだけでなく、寿命を縮めてしまうことにもつながります。

そして筋トレには筋力や体力をつける効果だけではなく、他にもさまざまな効果を得ることができる運動なのです。

今回は筋トレのさまざまな効果についてまとめています。筋トレは多くの人にとって有益な運動ですので、ぜひ日々の生活に取り入れましょう。

参考文献:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001189

筋トレをしてはいけない人

筋トレは非常に重要な運動ですが、心臓病の方の中には筋トレをすべきでない人、注意して行う必要がある人がいます。必ず主治医に今の病状を確認したうえで筋トレを実施しましょう。(参考:心臓リハビリテーションガイドライン)

絶対的禁忌:筋トレは禁止

  • 不安定狭心症
  • 代償されていない心不全
  • コントロールされていない不整脈
  • 重篤な肺高血圧症(平均肺動脈圧>55mmHg)
  • 重症で症状のある大動脈弁狭窄症
  • 急性心筋炎・心内膜炎・心外膜炎
  • コントロールされていない高血圧(>180/110mmHg)
  • 急性大動脈解離

筋トレの健康へのメリット

筋トレを行うことで、皆さんの体にとって多くの有益な効果を得ることができます。

ここからは筋トレのさまざまな効果についてまとめます。

血圧を下げる効果

血管の機能(内皮機能、拡張能など)が改善し、健康な40歳以上の人の血圧を下げる効果(収縮期血圧:-4mmHg、拡張期血圧:-2mmHg)があります。そして高血圧の人では、その効果(収縮期血圧:-6mmHg、拡張期血圧:-5mmHg)がより高まり、降圧薬と同じくらいの効果があります。

血糖を改善する効果

血液の中にある糖を筋肉に取り込む機能(インスリン感受性)の改善や、運動をした時のエネルギー消費量を増やすことがわかっています。筋トレを習慣的に行っている人は、そうでない人と比べ糖尿病の発生率が17%低いと報告されています。また、高齢者においても、空腹時の血糖値を下げる(-2~5mg/dl)効果や、HgA1cも改善(-0.34%)すると報告されています。

脂質を改善する効果

筋トレを行うことで、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が増加(+2~12mg/dl)し、総コレステロール(-8mg/dl)と中性脂肪(-7~13mg/dl)を下げる効果が得られると報告されています。また動脈硬化につながる因子を持っている人では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる(-13.4mg/dl)ことができたという報告もあります。

体重や身体組成を改善する効果

体重が重い人においては、脂肪を除いた体重(筋肉量など)を増やす(+0.8kg)一方で、体脂肪率を減らし(-1.6%)、全身の脂肪量も減らす(-1.0kg)ことができるとされています。

ただし、筋トレだけで得られる効果は限定的であるため、有酸素運動などを組み合わせることが望ましいです。

睡眠の質を改善する効果

睡眠不足や睡眠の質の低下は心臓病の方の寿命を縮める危険性があります。筋トレにも睡眠の質を改善する効果があり、有酸素運動を加えることでその効果はさらに高まることがわかっています。

睡眠と心臓病の関係についてはこちらも参考にしてください。

抑うつを軽減する効果

心臓病の方で抑うつを合併している人は4〜5人に1人(17〜27%)いると言われており、心臓病でない人の約3倍いるとされています。そして心臓病が重症になればなるほどその割合は増えていきます。

抑うつ自体が心臓病の方の病状を悪化させ、寿命を短くすることもわかっているのですが、筋トレをはじめとした運動を行うことで、抑うつ症状を軽減することも報告されています。

他にも、体力の指標である最大酸素摂取量の改善効果(+1~3ml/kg/min)や、動脈を柔らかくする効果、炎症を抑える効果など、さまざまな効果が報告されています。

まとめ

筋トレは筋力・体力を向上させるだけでなく、血圧や血糖値を下げる効果、睡眠の質を改善する効果など、多くのメリットがある運動です。そして、有酸素運動を加えることでその効果が高まることもわかっています。

適切な運動強度の決め方についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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