ずぼら運動学

【内科医執筆】脂肪肝の治し方。運動の効果とやり方は?

内科医マル

こんにちは、内科医のマルです。突然ですが、あなたは脂肪肝と診断されていますか?診断されると気になるものですよね。特にそのままにしておくともっと肝臓が悪くなるのではないか、何か自分でもできる改善方法はないか、などとお考えではないでしょうか?

私もよく質問される内容ですので、本日は、脂肪肝について診療のガイドラインなど信頼できる情報を基にまとめますね。ぜひ、生活にお役立て下さい。

今回はアルコールが原因ではない非アルコール性の脂肪肝(NAFLD)についてまとめます。

日本肝臓病学会が出している患者さん用のガイドラインも優しくまとめられているいますので、参考になると思います。

https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/nafld_2023.pdf

脂肪肝とは?放っておくと大変?

脂肪肝とは、肝臓に過剰な脂肪が蓄積される状態を指します。特に高齢者にとって、脂肪肝は軽視できない健康問題です。

非アルコール性脂肪肝を放置すると、より深刻な肝疾患に進展するリスクがあります。具体的には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝がんへの進行が懸念されます。

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)への進展

非アルコール性脂肪肝の患者のうち、約10-20%がNASHの状態なっていると報告されています(NAFLD/NASHの疫学)。NASHは肝細胞の炎症や傷害を伴う状態で、より深刻な肝疾患へのリスクが高まります。

肝硬変への進展

NASHからさらに進行すると、肝硬変に至る可能性があります。研究によると、NASHの患者の約10-20%が10年以内に肝硬変に進展するとされています(肝炎情報センター)。

肝硬変の人の末期は大変です。肝臓の機能が落ちると、血管の中からおなかに水が染み出てしまうようになります。おなかの中に溜まってしまった水は自然に出ていく事はなく、定期的に注射をして抜いてもらう必要があります。1か月に何度も病院で水を抜きに来る人もいますよ。抜いた水は黄色くシャバシャバしています。多い人は1Lも2Lも水が高まり、それだけで歩くのは大変です。

肝がんのリスク

非アルコール性脂肪肝およびNASHは肝がんのリスク因子となります。具体的な数値として:

その他の健康リスク

非アルコール性脂肪肝は肝臓だけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性があります:

  • 心血管疾患のリスクが高まります(NAFLD/NASH診療ガイドライン)。
  • 2型糖尿病の発症リスクが高いです。神戸大学の研究では、脂肪細胞でインスリンが効きにくくなると、FoxO1というタンパク質が過剰に活性化し、全身でインスリンが効きにくくなり、糖尿病と非アルコール性脂肪性肝炎が起こることが示されました(神戸大学
  • 他の臓器の悪性腫瘍発生リスクも上昇する可能性があります。例えば、大腸がんの発生頻度が1.87~3.08倍に増加するという報告や、乳がんの発生頻度が上昇するという報告があります(NAFLD/NASH診療ガイドライン)。

脂肪肝を放置することで、上記のような深刻な健康リスクに直面する可能性があるため、やはり放っておくのは得策ではないです。対策を行い、将来のリスクを回避しましょう。

脂肪肝の治療方法:ガイドラインに沿って解説

脂肪肝の治療には、生活習慣の改善が不可欠です。以下に、医学的ガイドラインに基づいた治療方法を解説します。

NAFLD/NASH診療ガイドライン より転用

食事療法

  • 基本はカロリーを抑えることです。以下のような工夫を取り入れてみましょう
  • 低脂肪・低糖質:加工食品や高脂肪の食品を避けましょう。ジュースや清涼飲料水の取り過ぎやビタミンの摂取に良いと思ってついつい食べ過ぎてしまう果物も果糖の取り過ぎも注意です。
  • 食物繊維を十分にとる:野菜、全粒穀物を多く摂取しましょう。食物繊維は、満腹感を助け、トータルの食事カロリー摂取量を減らすだけでなく、摂取した糖質の腸管からの吸収を緩やかにする働きがあり、肝臓への負担を減らします。
  • 適度なタンパク質摂取:魚、鶏肉、大豆製品など、ヘルシーなタンパク質源を積極的に取り入れます。

体重管理

  • 適正体重を維持することが脂肪肝の改善に非常に重要です。BMI(ボディマス指数)を参考に、健康的な体重を目指しましょう。
  • BMIの肥満の定義は30以上です。
  • 肥満がある場合には、体重の 7%を目標に減量し、徐々に標準体重を目指すことが勧められます(例;体重 90kg の場合、まずマイナス 6kg を目標にしましょう)(NAFLD/NASH診療ガイドライン)。

薬物療法

  • 場合によっては、医師の指導のもとで薬物療法が行われることもあります。特に脂肪性肝炎の進行を抑えるための薬が使用されることがあります。
  • 抗酸化作用があるビタミン E や、インスリンの効きをよくする作用のある糖尿病のお薬などが NASH の患者さんに有効であることが示されていますが、長期間にわたって肝硬変への進行や肝がんの発症を防ぐことができるかどうかは、まだはっきりと証明されていません(NAFLD/NASH診療ガイドライン)。

脂肪肝への運動の効果

運動は脂肪肝の改善において非常に効果的です。以下に、運動の効果をいくつか紹介します。

脂肪の減少

インスリン感受性の改善

  • 運動はインスリン感受性を改善し、血糖値のコントロールがしやすくなります。これにより、脂肪肝のリスクが低減します。(Diabetes Metab J. 2016 Aug;40(4):253-71)

抗炎症効果

運動方法について

運動は1週間に150分以上が望ましいとされています(肝炎情報センター)。これはWHOが慢性疾患の有無に関わらず世界の人々に推奨している”中強度の運動を1週間に150分以上”という基準に一致します。

そこで、簡略化され覚えやすいWHOの基準を覚えて、運動療法を実践してはいかがでしょうか?

以下が適度な運動の強度のレベルです。

少し汗ばんで息が上がるが快適に話せる程度です。ボルグ指数で言えば11~13点が適度な運動強度になります。

安心で効果的な運動を行い、脂肪肝もよくして、健康を維持してください!

運動強度の設定については以下の記事もごご参照ください。

医学的に適切な強度の運動ができるようになるアプリ

現在、循環器専門医がApple watch専用の運動支援アプリを開発中です。

循環器専門医の脈拍に基づいた運動強度の設定のノウハウと、Apple watchの精度の高い脈拍計測を掛け合わせた世界で初めてのアプリです。

週に150分以上の中強度以上の運動ができるようサポートします。

このアプリではエビデンスに基づいた医学的なノウハウを用いて中等度の強度の設定が可能で、運動中は中等度以上の運動になるようにApple watchが「スピードアップ」と通知を入れてくれます。

「せっかく運動するなら、無駄にならないいい運動にしたい」「そろそろ真面目に運動しないと」と思っている方にお勧めです。

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それでは今日も健康であなたらしい一日を♪

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