令和8年度の診療報酬改定では、生活習慣病管理料(Ⅱ)の点数が333点のまま据え置かれました。そのため「生活習慣病の外来は、今回あまり変わらなかった」と受け止めている先生も多いのではないでしょうか。
ところが告示と通知を細かく読むと、生活習慣病を診る診療所にとって、算定できる場面が広がった項目がいくつもあります。いずれも新しい設備は要らず、「ルールを知っているかどうか」で差がつく変更です。
この記事では、第48回日本高血圧学会総会(2026年10月)の診療保険委員会企画で筆者が講演した内容をもとに、生活習慣病外来で収益のプラスになり得る点数を3つに絞って解説します。それぞれについて、算定前に確認すべき要件と、厚生局の個別指導で実際に指摘されている例もあわせて紹介します。
執筆者:丸目 恭平(まるめ きょうへい)
循環器専門医/元厚生労働省 医系技官(循環器病対策専門官)/株式会社Doctock 代表取締役(国立循環器病研究センター発ベンチャー)
- 医師として:循環器専門医として、現在も診療に従事しています。
- 制度をつくる側として:令和6年度の診療報酬改定時は厚生労働省に在籍し、保険局医療課との折衝を経験しました。現在は日本高血圧学会 診療保険委員、日本心臓リハビリテーション学会 診療報酬対策委員として、学会要望の議論に参加しています。
- 支援する側として:医療機関の個別指導・適時調査の対策支援を行い、実際の個別指導の場にも同席した経験を持ちます。
令和8年度改定は3月5日に告示され、6月1日に施行されました。細かな取扱いはその後の疑義解釈で少しずつ明らかになり、9月に入っても新しい解釈が示されています。制度の変更が診療の現場に届くまでには、どうしても時間差が生まれます。その溝を少しでも埋めることが、この記事の目的です。
今回紹介する3つの点数の早見表
| 点数 | 令和8年度に何が変わったか | 主に算定する場面 |
|---|---|---|
| ① 生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括外の医学管理料等 | 包括から外れる項目が16項目から37項目に(新たに21項目) | (Ⅱ)を算定している患者の、他の疾患の管理や文書の交付(例:療養費同意書交付料 100点、傷病手当金意見書交付料 100点、特定薬剤治療管理料1 470点) |
| ② 地域包括診療加算 | 介護給付・予防給付を受けている要介護・要支援の患者が、高血圧など1疾患でも新たに対象に | 高血圧だけで通院している要介護・要支援の患者の再診ごとに38点(多剤処方の月は28点。加算2は31点/21点) |
| ③ 特定機能病院等紹介患者受入加算(新設) | 大病院からの紹介を受けた患者の初診を評価 | 特定機能病院(大学病院の本院など)・地域医療支援病院などから逆紹介された患者の初診に60点 |
① 生活習慣病管理料(Ⅱ):「333点の中」と思い込むと取りこぼす

生活習慣病管理料の9割以上は(Ⅱ)
生活習慣病管理料は令和6年度改定で(Ⅰ)と(Ⅱ)に分かれ、いまや主流は(Ⅱ)です。厚生労働省の社会医療診療行為別統計(令和7年8月審査分・1か月)では、(Ⅱ)が約1,319万件(うち診療所 約1,164万件)、(Ⅰ)は3区分を合わせて約114万件でした。生活習慣病管理料の9割以上が(Ⅱ)ということになります。
(Ⅱ)は333点・月1回で、令和8年度改定でも点数は変わっていません。変わったのは、その333点に何が含まれるかです。
包括から外れる医学管理料等が16項目から37項目に
(Ⅱ)は、検査や注射を出来高で算定できる一方、外来管理加算と医学管理料等の多くが333点に含まれる(包括される)仕組みです。令和8年度改定ではこの包括の範囲が見直され、新たに21項目が包括から外れました。以前から包括の外だった16項目と合わせ、37項目は要件を満たせば(Ⅱ)とは別に算定できます。
新たに包括から外れた21項目は以下の通りです。(厚生労働省資料 令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等より)

(認知症サポート指導料は表内にありませんが、通知上は包括から外れることが明記されています)
生活習慣病外来で出番が多いのは「文書料」と「特定薬剤」
37項目の多くはがん診療や救急など専門性の高いものですが、生活習慣病を診る診療所でも日常的に出番があるものがあります。
- 療養費同意書交付料(100点):はり・きゅう、あん摩マッサージ指圧の施術の同意書。腰痛症や神経痛を抱える高齢の高血圧・糖尿病の患者さんから求められる、典型的な場面です。診療所の外来で月に約10.5万件算定されています(令和7年8月審査分)
- 傷病手当金意見書交付料(100点):働く世代の患者さんが手術や他の病気で休職するときの意見書。同じく診療所の外来で月に約14.1万件
- 特定薬剤治療管理料1(470点。4か月目以降は原則235点):循環器では、ジギタリス製剤や抗不整脈薬の血中濃度を測定して投与量を管理する場合。心房細動や心不全を合併した高血圧の患者さんで出番があります
(Ⅱ)を算定している患者さんでは、これまでこれらは333点に含まれ、別に算定できませんでした。令和8年6月からは要件を満たせば別に算定できます。レセプトコンピューターの設定や、「(Ⅱ)の患者には算定しない」という院内の運用が改定前のまま残っていないか、一度確認してみてください。
「別に算定できる」は「別に見られる」ということ
包括から外れたということは、それぞれの点数の算定要件を個別に満たす必要がある、ということでもあります。厚生局が公表している個別指導の指摘事項には、次のような例があります。
- 特定薬剤治療管理料:薬剤の血中濃度、治療計画の要点を診療録に記載していない、または記載が不十分である(九州厚生局 令和5年度)。北海道厚生局の令和6年度の集計では、特定薬剤治療管理料1の指摘14件のうち10件が返還になっています
- 療養費同意書交付料:療養の給付を行うことが困難であると認められない患者に対して同意書等を交付している(九州厚生局 令和5年度、北海道厚生局 令和6年度)
- 傷病手当金意見書交付料:意見書を交付したにもかかわらず、労務不能に関する意見欄への記載がない(東北厚生局 令和5年度、九州厚生局 令和5年度)
333点に含まれていた間は、これらの点数を個別に返還する場面はありませんでした。別に算定を始めた日から、それぞれの算定要件と記載が独立して確認の対象になります。
あわせて押さえたい(Ⅱ)の見直し
- 糖尿病患者の眼科・歯科連携(新設):眼科医療機関連携強化加算・歯科医療機関連携強化加算が各60点(患者1人につき年1回)。眼科や歯科に紹介するときの診療情報提供料(Ⅰ)(250点)と併せて算定でき、加算のほうは次回の診療時に受診状況を確認して算定します(疑義解釈その5、令和8年5月8日)
- 療養計画書の患者署名が不要に:(Ⅰ)(Ⅱ)とも。交付は引き続き概ね4か月に1回以上必要です
- 高血圧症治療補助アプリ:アプリを算定できる医療機関の要件(地域包括診療加算・地域包括診療料・生活習慣病管理料(Ⅰ)を算定する高血圧の患者を治療してきた医療機関)に、生活習慣病管理料(Ⅱ)が加わりました。(Ⅱ)を中心に算定している診療所でも使えるようになったということです。プログラム医療機器等指導管理料(90点、初回は導入期加算50点。施設基準の届出が必要)は以前から(Ⅱ)の包括の外です
- 在宅自己注射を行う患者:(Ⅰ)(Ⅱ)と在宅自己注射指導管理料を併せて算定できない取扱いが、インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬などの糖尿病の薬剤を使う場合に限定されました。
② 地域包括診療加算:高血圧1疾患+要介護・要支援でも対象に

令和8年6月から新たに算定できる患者
地域包括診療加算は、主治医機能を持つ診療所が慢性疾患の患者さんに継続的・全人的な医療を行うことを評価する、再診料への加算です。これまでは「6疾病のうち2つ以上」か「認知症+他の病気」の患者さんが対象でしたが、令和8年度改定で、要介護・要支援の患者さんが1疾患でも新たに算定できるようになりました。
| 新たに対象になった患者 | 令和8年6月から(加算1/加算2) |
|---|---|
| 介護給付・予防給付を受けている要介護・要支援の患者で、高血圧症などの病気を1つ持つ人 | 自院の処方が多剤でなければ 38点/31点 多剤の月は 28点/21点 |
つまり、高血圧だけで通院している要介護・要支援の患者さんが、令和8年6月から新たに対象になりました。届出をしている診療所であれば、該当する患者さんを洗い出すだけで、再診のたびに加算を算定できます。
まだ再診の2%台にしか使われていない
社会医療診療行為別統計(令和7年8月審査分)では、診療所の再診料約7,486万回のうち、地域包括診療加算(1・2)が算定されたのは約175万回、2%台にとどまります。要件の多さから届出を見送ってきた診療所も多いはずですが、対象患者が広がった今回は、改めて検討する価値があります。
算定前に確認すること抜粋
- 施設基準の届出:診療所に限ります。慢性疾患の指導に係る研修を修了した担当医の配置、時間外の対応体制(時間外対応体制加算の届出、または常勤換算2名以上の医師の配置など)、健康相談・介護保険・予防接種の相談に応じる旨の院内掲示などが必要です。加算1は往診・訪問診療を提供できる体制に加え、外来から往診・訪問診療に移行した患者の実績も求められます
- 介護給付・予防給付の受給を確認する:要件は「介護給付若しくは予防給付を受けている」要介護被保険者等です。認定の有無だけでなく、介護サービスを実際に利用しているかを確認し、診療録に残してください
- 患者の同意:初回の算定時に、署名付きの同意書を作成して診療録に添付します(直近1年間に4回以上の受診歴がある患者は、診療の要点を説明していれば同意の手続きを省略できます)
- 他院を含めた受診先と処方薬の把握:患者が受診している医療機関をすべて把握し、処方されている医薬品をすべて管理して診療録に記載します。令和8年度からは、患家の残薬の状況を聴取して服薬管理・処方調整を行うことも要件に加わりました
- 院外処方の場合:連携薬局が必要です。今回、緊急時に必要な解熱鎮痛消炎剤や血圧降下剤などを院内処方できる体制がある診療所では、連携薬局が24時間対応でなくてもよくなりました
- 他院との重複:対象とする疾病が重複しない場合に限り、他の医療機関でも地域包括診療加算(または地域包括診療料)を算定できます
個別指導での指摘例
- 患者の同意を得たことが明らかではない(東北厚生局 令和5年度、加算2)
- 他の医療機関で処方されているものも含め、直近の投薬内容の全てについて診療録に記載がない(中国四国厚生局 令和5年度、加算1)
- 対象となる患者以外の患者に対して算定している(近畿厚生局 令和元年度)
- 健康診断や検診の受診勧奨を行い、その結果等を診療録に記載していない(近畿厚生局 平成29年度)
- 研修要件を満たしていない医師が指導及び診療を行った場合に算定している(近畿厚生局 令和元年度)
対象を広げて算定を始めるときこそ、なぜこの患者さんが対象なのかを診療録で説明できるようにしておきましょう。
③ 特定機能病院等紹介患者受入加算:大病院からの逆紹介に初診+60点

なぜ今、逆紹介が増えるのか
今回の改定で、特定機能病院などの大病院には、症状が安定した患者さんを地域に戻す「逆紹介」を増やす強い動機が生まれました。紹介・逆紹介の割合が低い大病院では、紹介状なしで受診した患者などの初診料・外来診療料が減算されますが、その逆紹介割合の基準が引き上げられ(特定機能病院・地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関は30‰未満→50‰未満、許可病床400床以上の病院は20‰未満→40‰未満)、さらに外来診療料の減算の対象に「過去1年間に12回以上再診した患者」が加わりました。ちなみに、単位「‰(パーミル)」は1,000分の1を示す単位で、「患者数1,000人あたり何人か」を意味します。
大病院に通い続けている生活習慣病の患者さんが、地域の診療所に戻ってくる流れが強まります。その受け皿となる診療所の側の評価として新設されたのが、この加算です。
算定の要件
- 点数:初診料への加算として60点(初診料の注15)。施設基準の届出は不要です
- 算定できる医療機関:診療所、または許可病床200床未満の病院
- 紹介元:特定機能病院、地域医療支援病院(一般病床200床未満を除く)、紹介受診重点医療機関(同)、許可病床400床以上の病院(同)
- 紹介の形:紹介元の医師が、診療状況を示す文書(電子的に送付されたものを含む)を添えて紹介した患者であること。継続的な治療管理が前提で、単回の画像検査のみを目的とした紹介など、その後の継続的な診療を予定していない場合は対象外です(疑義解釈その12、令和8年9月2日)
- 初診であること:初診料を算定する場合の加算なので、以前から自院に通院していて初診料を算定しない患者さんは対象になりません
あわせて確認したい:連携強化診療情報提供料
逆紹介を受けたあとも大病院と共同で治療管理を続ける場合は、連携強化診療情報提供料(150点、患者1人につき3か月に1回)の対象が広がりました。令和8年度からは、診療所から大病院へ診療状況を返す場合を含め、紹介元・紹介先のどちらの情報提供でも算定できます。生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括の外の項目でもあります。
受け入れの準備
- 紹介状は診療録に取り込んで保管する(算定の根拠になる文書です)
- 紹介元が対象の病院か確認する(地域医療支援病院・紹介受診重点医療機関は都道府県が公表しています)
- 地域の大病院の地域連携室に、受け入れられる疾患や曜日を伝えておく
紹介に関わる点数は、文書が残っているかどうかがすべてです。個別指導では、診療情報提供料(Ⅰ)についても「受診行動を伴わない患者紹介の返事について算定している」といった指摘があり、北海道厚生局の令和6年度の集計では指摘19件のうち15件が返還になっています。
新しく算定を始める点数こそ、個別指導で見られる
3つに共通するのは、点数表のうえで「算定できる」ようになっても、要件を満たす記載がなければ返還の対象になるという点です。個別指導では、算定した点数と診療録の記載が矛盾していないかが確認されます(流れは「新規個別指導とは?初めて受ける院長のための準備・当日の流れ・確認されるポイント」で解説しています)。
改定後に新しく算定を始めた項目は、院内で記載の型がまだ固まっていないことが多く、指摘が集まりやすい領域です。算定を始める前に、院内の運用を整えておくことをおすすめします。
まとめ
| 点数 | 令和8年度の変更 | 算定前に確認すること |
|---|---|---|
| ① 生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括外の医学管理料等 | 包括から外れる項目が16項目から37項目に | (Ⅱ)の患者にも療養費同意書・傷病手当金意見書・特定薬剤治療管理料などを算定しているか。それぞれの記載要件を満たしているか |
| ② 地域包括診療加算 | 介護給付等を受けている要介護・要支援の患者が1疾患でも新たに対象。再診ごとに38点(多剤処方の月は28点。加算2は31点/21点) | 施設基準の届出、同意書、他院処方と残薬の把握・記載、介護給付等の受給の確認 |
| ③ 特定機能病院等紹介患者受入加算 | 新設。大病院から紹介された患者の初診に60点 | 文書による紹介か、紹介元が対象の病院か、継続的な診療が前提か |
収益を上積みするためにも、個別指導で身を守るためにも、まずルールを正しく把握することが最も効率のよい備えです。
算定を始める前に、第三者の目で確認したい先生へ
改定のたびに点数表と通知、相次ぐ疑義解釈を読み込むのは、診療の合間には大きな負担です。本来、先生の時間と集中力は目の前の患者さんに向けられるべきもの。制度と現場の間にある溝を埋めることが、当社の役割だと考えています。
当社の「個別指導・適時調査 対策支援室」では、元厚生労働省医系技官で現役の循環器専門医が、厚生局の指導医療官と同じ視点でカルテとレセプトを確認し、記載の改善点をフィードバックします。要件を満たしていれば追加で算定できる項目のご提案も行います。遠隔で進められ、初回相談は無料です。
メールでのお問い合わせは info@doctock.jp へどうぞ。
出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」(PDF)
- 「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号):A000 初診料 注15、A001 再診料 注12、B001-3-3 生活習慣病管理料(Ⅱ)、B005-14 プログラム医療機器等指導管理料 ほか(医科点数表 PDF)
- 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)(医科 PDF)
- 「特定保険医療材料の材料価格算定に関する留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第1号)227 高血圧症治療補助アプリ
- 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その5)」(令和8年5月8日)問12、「同(その12)」(令和8年9月2日)問1
- 厚生労働省「令和7年社会医療診療行為別統計」(令和7年8月審査分)第24表 医科診療(入院外)(e-Stat)
- 各地方厚生(支)局が公表した個別指導の主な指摘事項(医科):北海道厚生局(令和6年度)、東北厚生局(令和5年度)、中国四国厚生局(令和5年度)、九州厚生局(令和5年度)、近畿厚生局(平成29年度・令和元年度)
監修:丸目恭平(循環器専門医・元厚生労働省医系技官)/最終更新:2026年10月6日
※ 本記事は公表資料に基づく一般的な情報提供です。算定の可否は個々の患者さんの状態と診療録の記載によって異なり、結果を保証するものではありません。実際の算定にあたっては、最新の告示・通知・疑義解釈と所管の地方厚生(支)局の案内をご確認ください。当社は官公署へ提出する書類の作成代行は行いません。
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