ずぼら運動学

【理学療法士解説】膝の痛みがあっても筋肉や心臓に十分に負荷がかけれる運動

膝が痛むので、なかなか運動ができません。どうしたらいいですか?

私が担当する心臓リハビリに参加している方も年々高齢化しており、心臓だけでなくさまざまな病気を合併している人が増えています。

その中でも、“膝の痛み”をはじめとした整形外科疾患を持っている方は非常に多いです。

  • 膝が痛いから早く歩けない
  • 筋トレも膝が痛むからできない
  • もう少し運動強度を上げないといけないけど、膝が痛いから難しい

このような人は多くいるのではないでしょうか。

今回は膝の痛みがあってもできる、効果的な運動の例を紹介します。

膝に痛みが出る原因

日本人で膝の痛みを感じている人は、約3人に1人いる(32.7%)と言われています(Yoshimura.2013)

膝が痛む原因は多くありますが、代表的な病気は“変形性膝関節症”です。

変形性膝関節症は、女性に多くみられ、高齢者や肥満な人ほど有病率は高くなります。

加齢とともに膝にある軟骨がすり減り、関節が変形していきます。日本人は膝の内側が変形し“O脚”になる場合が多いと言われています。

日本整形外科学会HPより引用

初期段階では、立ち上がりや歩き始めなど動作を開始する時に痛みが出やすく、進行するにつれて正座や階段を昇ることが難しくなり、末期になると何もしていなくても膝が痛むようになります。

膝関節痛の治療には運動が重要

膝に痛みがあると運動を避けるようになる人が多いと思います。

しかし、膝の痛みがあるからと言って運動をしないでいると筋力が低下し、膝にかかる負担が増加しより変形を強めてしまう可能性があります。

この悪循環を断ち切るためには、負担がかからない範囲での運動を行うことが重要です。

膝への負担を減らす運動の例

水中歩行

プールなど水中での運動は心疾患の方にとっても有効であることが示されています。

Leeらの報告によると、65歳以上の心臓病の方に対し、ややきついと感じる強度(Borg scale 11〜14)、もしくは運動負荷試験の結果をもとに算出した運動中の目標心拍数で、トラック歩行か水中での歩行を実施してもらった結果を報告しています。その結果、トラック歩行も水中歩行も同じくらい体力が改善した、としています。

水中歩行は、ゆっくり行っても2.5METs、きついと感じるくらい速く歩くと6.8METsもの負荷がかかります。ちなみに、散歩は約3METsに相当しますし、水中での早歩きはサッカーやテニスの試合と同じくらいの負荷がかかることになります。

水中での歩行のメリットは以下のものが挙げられます。

  • 浮力により関節への負担を減らすことができる
  • 水圧によって血液の循環が良くなる
  • 水の抵抗に逆らって歩くため、筋力・体力を改善する効果がある
  • 体から熱が奪われる効果もあり、エネルギー消費量が増える

水中での歩行を行う際に注意していただきたい点があります。

まず、いつものように陸上を歩くよりも体にかかる負荷は少し大きくなるため、運動後にいつもより疲労感を感じてしまう可能性があります。負荷の高い運動を急に行うと、かえって心臓に負担をかけてしまう可能性があるため、まずは短時間から開始し、疲労感を確認しながら徐々に運動時間を増やすようにしてください。

次に、水圧によって血液の循環が良くなるのですが、それに伴って普段の陸上の運動よりも心拍数が上がりにくくなる可能性があります。心肺運動負荷試験の結果から運動中の目標心拍数を指導されることがあるかと思います。水中歩行ではその心拍数だと負荷が大きくなってしまうことがあるので、水中歩行を始めるときは一度医師や理学療法士に相談するようにしてください。

また、水中であっても運動によって汗はかくので、こまめに水分補給をするようにしましょう

ノルディックウォーキング

ノルディックウォーキングは、専用のポールを使用して上半身もしっかりと使いながら歩く運動方法です。フィンランド発祥で、元々はクロスカントリースキーの選手が夏の期間に行っていたトレーニング方法から始まったと言われています(日本ノルディックウォーキング協会HPより)。

ノルディックウォーキングでは通常の歩行時に使う筋肉に加え、上半身の筋肉も使用するため、全身の70−90%もの筋肉を使用するとされており、その結果、エネルギー消費量が8%も増加すると報告されています。

また、両手で専用のポールを使用するため、膝や腰への関節の負担を減らすことができることもわかっています。

心臓病の人へのノルディックウォーキングの効果についてもいくつか報告されており、トレッドミルでの歩行よりもノルディックウォーキングの方がより体力を向上させた、という報告もあります(Cugusi et al.Eur J Prev Cardiol.2017 Dec;24(18):1938-1955.)。

太極拳

太極拳は、中国の武術が起源の運動で、ゆっくりとした穏やかな動きと身体の姿勢、瞑想的な精神状態、呼吸をコントロールしながら行う運動です。

研究報告は多くありませんが、太極拳を行うことで膝関節の痛みを改善することができた、というものや、歩行機能を改善させたという報告があります。

心臓病の方への運動の効果について、Huiらが複数の論文の結果をまとめたものを報告しています。まず、体力の指標である6分間歩行試験の結果は、太極拳を3ヶ月、もしくは6ヶ月実施したグループにおいてより長い距離を歩けていたとしています。また、歩行能力やバランス能力を簡単に評価できる指標(Timed Up and Go test : TUG)の改善もみられました。これらはいずれも太極拳の特徴的なゆっくりとした動きによって、筋力などの運動機能とバランス能力が改善したためと筆者はまとめています。

他にも、生活の質(QOL)や抑うつ、睡眠の質の改善や、心臓病の悪化による再入院の減少効果についても有効だった、と報告しています。そして、太極拳を行ったことによる有害事象は今回の文献では報告されていません。

太極拳のさまざまな効果については、厚生労働省のホームページにも記載されています。(https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c02/12.html)

ハートフィット

当社が運営している1畳でできるメディカルフィットネスである”ハートフィット”の運動は膝の痛みがなくしっかりと負荷がかけられると好評です。

変形性膝関節症など膝の障害を持つ方も参加しています。

ハートフィットでは有酸素運動としてエアロビクスを行っています。飛んだり跳ねたりする動きはなく、初心者の方でも簡単にできるような動きを中心に構成しています。

音楽もゆっくりしたテンポの音楽です。

これらのノウハウは、シニアが楽しめる無理のないエアロビックである、ダイヤビックの振り付けをご考案された小林祐美先生にご指導いただいたものです。

膝に負担をかけずに、しっかりと筋肉や心臓に負荷をかけて健康増進に取り組みたい方は、ハートフィットもご活用ください。

現在東京都湯島駅徒歩1分の場所でのみ開催しております。

ご興味がある方は以下のサイトもご参照下さい。

    まとめ

    膝関節痛は心臓リハビリテーションを行う上で、阻害因子となる要素の一つです。

    膝が痛いからといって運動を行わないと、心臓だけでなく膝にとっても悪影響を及ぼす可能性があります。

    整形外科の医師、心臓病の医師と相談し、双方にとって有効な運動を行なっていきましょう。

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