【講演報告】第48回日本高血圧学会総会 診療保険委員会企画に代表の丸目が登壇|学会要望で実現した令和8年度改定と、厚生局の個別指導で指摘されやすいポイント

2026年10月10日(土)、宇都宮市で開催された第48回日本高血圧学会総会の診療保険委員会企画「高血圧治療に役立つ令和8年度診療報酬改定エッセンス」に、株式会社Doctock代表取締役・循環器専門医の丸目恭平が演者として登壇し、「令和8年度診療報酬改定の高血圧関連エッセンス」と題して講演しました。

丸目は日本高血圧学会 診療保険委員会の委員として、令和8年度改定に向けた学会要望のとりまとめと厚生労働省との折衝に参画しました。講演では、その要望が改定に反映されるまでの過程と、厚生局の個別指導・適時調査の対策支援で蓄積した「指摘されやすいポイント」を、制度をつくる側と診療する側の両方の視点から解説しました。

講演概要

  • 学会:第48回日本高血圧学会総会(2026年10月10日〜12日、ライトキューブ宇都宮)
  • セッション:診療保険委員会企画「高血圧治療に役立つ令和8年度診療報酬改定エッセンス」
  • 日時:2026年10月10日(土)8:00〜9:10(第4会場)
  • 座長:豊田 一則 先生(国立循環器病研究センター)、三浦 伸一郎 先生(福岡大学)
  • 演者・演題:桑原 政成 先生(自治医科大学)「診療報酬改定の考え方―病院勤務医の視点と政策的アプローチ―」/勝谷 友宏 先生(勝谷医院)「開業医の視点から考える令和8年度診療報酬改訂のポイント」/丸目 恭平(株式会社Doctock)「令和8年度診療報酬改定の高血圧関連エッセンス」
  • 講師:丸目 恭平(循環器専門医、日本高血圧学会 診療保険委員、元厚生労働省 循環器病対策専門官、国立循環器病研究センター 非常勤医師、福岡大学 客員准教授、熊本大学 客員助教/株式会社Doctock 代表取締役)
  • プログラム:第48回日本高血圧学会総会 プログラム

講演のねらい:制度をつくる側と診療する側、両方の視点から

診療報酬は、学会の要望が厚生労働省での議論を経て点数になり、現場で算定され、厚生局の個別指導で確認される、という一つの流れの中にあります。丸目は、令和6年度改定の時期に厚生労働省に在籍して保険局医療課との折衝に携わり、現在は日本高血圧学会と日本心臓リハビリテーション学会の委員として学会要望の議論に参加し、株式会社Doctockでは厚生局の個別指導・適時調査を受ける医療機関を支援しています。講演では、この流れの上流と下流の両方を経験した立場から、次の3点をお話ししました。

  1. 学会要望が改定に反映されるまでの過程と、令和8年度改定で実現した高血圧症治療補助アプリの施設基準の見直し
  2. 令和8年度改定で、高血圧診療の収益にプラスになり得る3つの変更
  3. 厚生局の個別指導で、高血圧診療に関わる点数について指摘されやすい3つのポイント

1. 学会要望が実現するまで:高血圧症治療補助アプリの施設基準の見直し

臨床現場と制度の「ずれ」を調査で示す

高血圧症治療補助アプリを用いた指導管理は、プログラム医療機器等指導管理料として算定します。令和6年度改定までの施設基準では、算定できるのは生活習慣病管理料(Ⅰ)で高血圧症の患者を管理している医療機関に限られ、生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定する多くの診療所が対象外でした。臨床現場と制度の間に、ずれがあったということです。

診療保険委員会では、この要件が適切な治療機会の提供を妨げているという問題意識から、学会員を対象に算定状況の調査を行いました(回答497件)。アプリの指導管理料を算定している施設が40施設だったのに対し、「生活習慣病管理料(Ⅰ)の算定が必要」という要件だけを理由に算定できていない施設が69施設、その要件に加えて他の理由もある施設が36施設ありました。要件を見直せば算定施設は2.7倍、他の理由も解消すれば3.6倍に増えると推定され、この結果を根拠に学会要望をとりまとめました。

要望が点数になるまでの5つのステップ

  1. 学会で要望を作成:診療保険委員会で、臨床上の必要性とエビデンスを整理する
  2. 提案書を提出:医療技術評価提案書を厚生労働省へ提出する(内科系学会社会保険連合で学会間を調整)
  3. 医療技術評価分科会:有効性・安全性・医療費への影響を評価する
  4. 中央社会保険医療協議会(中医協)で審議:個別改定項目として議論する
  5. 答申・告示・施行:令和8年度改定は2026年2月に答申、3月5日に告示、6月1日に施行

厚生労働省との折衝の結果、令和8年度改定では生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定する医療機関でも、プログラム医療機器等指導管理料(高血圧症治療補助アプリを用いる場合)を算定できるようになりました。講演では、調査結果をどのように要望へ反映させ、提出から改定に至るまでにどのような議論があったかを、折衝に参画した立場から紹介しました。

2. 令和8年度改定で収益にプラスになり得る3つの変更

  • 生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括の見直し:333点・月1回の点数は据え置きのまま、包括から外れて別に算定できる医学管理料等が16項目から37項目に増えました(新規21項目)。特定薬剤治療管理料、傷病手当金意見書交付料、療養費同意書交付料、認知症サポート指導料など、生活習慣病外来で出番の多い項目が含まれます。「他の管理も全部333点の中」と考えたままでは、算定漏れになります。
  • 地域包括診療加算の対象拡大:これまでは高血圧症・糖尿病・脂質異常症・慢性心不全・慢性腎臓病・認知症のうち2つ以上が必要でしたが、令和8年6月からは要介護・要支援の患者であれば、認知症以外の5疾病のうち1つで算定できます。
  • 特定機能病院等紹介患者受入加算(新設):特定機能病院や許可病床400床以上の病院などから逆紹介された患者の初診時に、診療所・200床未満の病院で60点を算定できます。逆紹介を受け入れる体制は、加算に加えて安定した患者基盤にもつながります。

それぞれの算定要件と、算定を始める前に確認しておきたい点は、コラム「令和8年度改定で生活習慣病外来の増益になり得る点数3選」で詳しく解説しています。

3. 厚生局の個別指導で指摘されやすい3つのポイント

新しく算定を始めた点数ほど、個別指導で確認されます。講演では、各地方厚生局が公表している指摘事例と対策支援室での経験から、高血圧診療に関わる点数のうち指摘が集中する3つの領域を取り上げました。

  • 外来管理加算:聴取した事項と診察所見の要点がカルテにない、または不十分という指摘が、全国の厚生局に共通しています。処置やリハビリテーションを行った日、家族のみの来院、電話再診での算定も指摘の対象です。北海道厚生局の令和6年度の集計では、指摘17件のうち9件が返還に至っています。
  • 生活習慣病管理料・特定疾患療養管理料・難病外来指導管理料:対象外の疾患や主病でない疾患での算定、管理内容の要点がカルテにない・画一的、療養計画書の未作成・未交付(高血圧症の患者で血圧値が未記載)などが指摘されています。北海道厚生局の令和6年度の集計では、特定疾患療養管理料の指摘29件のうち23件が返還でした。
  • 在宅酸素療法指導管理料・在宅自己注射指導管理料:在宅酸素療法では適応の根拠(開始時のPaO2またはSpO2、心不全の場合はNYHA分類・睡眠時のチェーンストークス呼吸・AHI)と毎月の酸素使用状況・SpO2の記録が、在宅自己注射では導入前の2回以上の指導の記録と指導内容の文書交付が確認されます。北海道厚生局の令和6年度の集計では、在宅自己注射は指摘42件のうち34件、在宅酸素療法は8件のうち5件が返還でした。

3つに共通する対策は、「何を聞き、何を診て、何を指導したか」を患者ごとに具体的にカルテへ残すことです。カルテ記載の例と自院で点検するときのチェックリストは、コラム「生活習慣病外来で個別指導の指摘が多いポイント3選」にまとめています。

講演のまとめ

講演の最後には、「収益の上積みのためにも、自院を守るためにも、ルールの把握が有効」というメッセージをお伝えしました。改定で新しく算定できるようになった点数は、裏を返せば個別指導で新しく見られる点数でもあります。算定を始めるときに要件と記載を整えておくことが、増益と指導対策の両方につながります。

関連コラム・支援事例


講演の内容や、個別指導・適時調査への備えについてのご質問は、お気軽にご連絡ください(info@doctock.jp)。個別指導の通知が届いた先生、改定後に新しく算定を始めた点数の記載を第三者の目で確認しておきたい先生は、厚生局の個別指導・適時調査 対策支援室までご相談ください。電子カルテの条件が合う場合には、遠隔でも支援が可能です。

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※ 本記事の点数・算定要件は、令和8年6月1日施行の告示・通知に基づいています。個別指導の結果は事案ごとに異なり、特定の結果を保証するものではありません。なお、官公署へ提出する書類の作成代行は行っておりません。