ずぼら運動学

理学療法士が解説!座りっぱなしは心臓病に悪影響。対策は?

心臓病患者こず江さん

心臓病になってから動くのが心配で。コロナウイルス感染が怖い時期をきっかけに、余計に家の中で過ごす時間が増えています。

心リハ腎リハPTアッキー

自宅の中で過ごす時間が増えると、どうしても座って過ごす時間が多くなってしまいますよね。しかし、座りっぱなしの生活は、心臓病にとって悪影響を及ぼすことがわかっているんですよ。今日はそのことについて、わかりやすく解説していきます。最後に座りっぱなしへの対策として簡単に取り入れられる運動やストレッチも紹介します。これを読んで、少しずつでも体を動かしてくださいね。

日本人は世界の中でも最も座っている時間が長い、と言われています。さらに、2020年からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出を控えるようになった方も多いのではないでしょうか。以前、日常生活動作の心臓への負担について解説しましたが、その中でも特に強度の低い行動が増えると心臓病へ悪影響を及ぼすことがわかっています。

今回は座っている時間と心臓病への影響について解説します。

本記事の内容のダイジェストは1分間で動画にもまとめています。

座っている時間はどのように変化している?

以前の記事で、活動量の指標であるMETsについてまとめました。そのMETsが1.5以下のすべての活動を「座位行動」と呼びます(ただし、寝ている時間は除きます)。具体的には、テレビを観る、パソコン作業をする、移動中に座っている、などが座位行動に含まれます。

こちらの過去の記事もご参照下さい↓

総務省の統計(令和3年社会生活基本調査)によると、生活時間の内訳(全世代・男女平均)は平成28年と比べると、休養・くつろぎに当てられる時間が20分増加(平均1時間57分)し、睡眠時間も平均で14分(平均7時間54分)増えていました。

この総務省の調査は、ちょうど新型コロナウイルス感染の第5波が落ち着いた10月に実施されました。

総務省の調査とは少し時期は異なりますが、新型コロナウイルスの流行に伴い、身体活動量が減少した、という報告があります。

山田らは令和2年1月と令和2年4月における活動時間を比較しています。令和2年1月は第1波が始まる前、令和2年4月は第1波真っ只中に相当します。この報告によると、1月は1週間あたり245分の活動を行なっていたにもかかわらず、4月は1週間あたり180分まで減少していました。

少し話が変わりますが、アメリカ人女性の家事におけるエネルギー消費量が、1960年と比べると、2010年は半分に減っている、というArcherらの報告もあります。最近はロボット掃除機や最新の調理家電など、便利なものが非常に増えていますよね。非常に便利で日々の生活が楽になる反面、活動量が減少してしまうという影響も考えてみる必要があるのかもしれませんね。

座っている時間が長いと心臓病になりやすい!?

では、座位行動が心臓病の発症に影響を及ぼすのか解説します。

Wuらは座位行動と心臓病に関する複数の論文を解析しています。その結果、1日10時間の座位行動を行っている人は、座位行動が3時間弱の人と比べて、心臓病になる可能性が24%高くなるとしています。同じ論文の中で、約10時間の座位行動を行っている人は、3時間弱しか座位行動を行なっていない人と比べて心臓病で亡くなる可能性が29%も高くなると報告しています。

また、Pattersonらは複数の文献を解析した結果、1日6−8時間座っている、もしくはテレビを3−4時間見ていると、心臓病やその他の病気で死亡する確率が高くなる、と報告しています。

座っている時間を減らして長生きしよう

総務省の令和3年の統計では、平成28年と比べて休養・くつろぎの時間が20分増加していた、と報告されていますが、それがどれほどの影響を与えるのかピンときませんよね。

Lansitleらは、フィンランド人660人(平均68.9歳)に活動量を測定する機器をつけ、2週間にわたって日々の活動量を測定し、その後平均6年間の間でどのような病気になったのかを調査しました。その結果、座っている時間が10分増加するごとに、死亡率が5.6%増加した、と報告しています。反対に、低強度の活動(2〜3.5METs)の活動を10分間増やすと死亡率は6.5%減少させることができるとも報告しました。2〜3.5METsの活動はストレッチや、自分の体重だけでの軽い筋力トレーニング、掃除や洗濯などが相当します。

心臓病を防ぐためにも、まずは数分から、ストレッチや軽い筋力トレーニングを行う事で、座りっぱなしの時間を減らしましょう!

今までは、座りっぱなしが心臓病の発症に与える影響を見てきましたが、心臓病になると座りっぱなしの時間が増えることも知られています。

Bakkerらは、心臓病の人とそうでない人で、座っている時間が異なるのか、という調査を行いました。その結果、心臓病でない人(平均年齢60歳、男性62%)は1日あたり9.4時間座っているのに対し、心臓病の人(平均年齢63歳、男性75%)は1日あたり10.4時間も座って過ごしていることがわかりました。

よって、長時間の座りっぱなし→心臓病になる→さらに座りっぱなしの時間が長くなるという悪循環を断ち切るためににも、心臓病の方は特に、座りっぱなしの時間を短くする意識を持ってください!

とはいえ、実際に自宅で動く時間を作ろうと思っても、1人ではなかなか実践できないことも多いですよね。心臓病の方には心臓リハビリテーションに参加することが強く勧められています。誰かに見られていると運動も継続しやすいですし、心臓リハビリテーションを実施している施設には医療スタッフが在籍しているので、普段の生活で困ったことも相談しやすいと思います。また、Bakkerらは心臓リハビリテーションに参加することで、自宅で座って過ごす時間を減らす効果があることも報告しています。ぜひ一度、心臓リハビリテーションに参加してみてください。

【対策】座りっぱなしの生活を改善しましょう!

心臓リハビリテーションのガイドラインでは、1日20〜60分の運動を、週3〜5日間行うことを推奨しています。しかし、体力に自信がない人ではなかなか継続できないことも多いと思います。そんな時でもこまめに、少しずつでも体を動かすように意識をしましょう。今回まとめたように、座りっぱなしの生活は心臓病になる可能性を高くしてしまいます。

  • テレビを見ながらストレッチを行う
  • すきま時間で軽い筋トレを行う
  • 近い距離は歩いて移動する
  • インターネットでの買い物に頼らず、実際にお店に行って買い物をする
  • 携帯電話でアラームを設定し、座りっぱなしやテレビを見る時間などを区切る

など、ちょっとした工夫で運動量を増やすことができます。

我々が実施している、病院外での心臓リハビリ様プログラムであるハートクラブでは畳一畳でできる筋トレ・ストレッチを指導しています。その中で安眠にもつながったと好評だった腹筋運動については記事にまとめていますので、参考にしてください。

座りっぱなしの生活を改善し、健康な生活を送りましょう。

まとめ

  • 座りっぱなしの生活は、心臓病になる可能性を高くします。
  • 心臓病の人は健康な人と比べ、座っている時間が長い傾向があります。
  • 低強度の活動(2〜3.5METs)の活動を10分間増やすと死亡率は6.5%減少します。
  • 座りっぱなしの時間は1日6時間未満にするように、まずは数分からでも、こまめに体を動かしましょう。

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